スタートアップの成功を支える人材確保術
県内全エリア
●概要
長野県内で活躍する先輩起業家にご登壇いただきます。県内でどのようにして優秀な人材を確保し、そして成長に繋げているのか、具体的な方法やコツ等を実体験に基づきお話しいただきます。また、県の人材ニーズに関わる相談拠点とその活用方法を紹介します。人材確保に悩む起業家や経営者の皆様のご参加をお待ちしております!
●対象
起業家、これから起業を考えている方、人材確保に悩む経営者、創業支援機関 など
●スケジュール
12:00-12:20 :先輩起業家事業紹介
12:20-12:45 :対談(テーマ:ベンチャー企業の人材確保)
12:45-12:50 :プロフェッショナル人材戦略拠点のご紹介
12:50-13:00 :Q&A
●登壇企業名 / 登壇者役職指名
ICS-net株式会社 / 代表取締役CEO 小池祥悟 氏
株式会社XAXA / 代表取締役 平田沙織 氏
■お申込みはこちらから
https://zoom.us/webinar/register/WN_xupOKzNsQwOuQ8CQL-U0bA#/registration
SSSコラム⑨チームビルディング
担当:SSSコーディネーター久保
こんにちは、SSSコーディネーターの久保です。
今回はスタートアップ企業が抱える「人」の悩みについて、お話したいと思います。
(※本コラムの内容は執筆者個人の見解であり、長野県やSSSの公式見解ではありません。)
人手不足が叫ばれる時代であり、どの企業にとっても人材獲得や採用は経営上の大きな課題となっています。特に、社員数が比較的少ないスタートアップにとっては、一人の採用によって大きく会社の雰囲気が変わる可能性があり、場合によっては大きな成長を遂げることもあれば、経営リスクに直面することもあり得ます。
後者の可能性をゼロにはできないですが、大事なポイントを抑えておくことで、そのリスクを低くすることができます。重要なポイントとして、前回は入口となる人材採用についてお話したので、今回は、個々人がパフォーマンスを最大限発揮できるチームビルディングについて書いていきます。
チームビルディング
カルチャーがフィットする人材が採用できても、その人材がしっかりと自社やチームになじんでいくことが経営上も重要になります。その際、仕事をしながら慣れる、というスタイルもありつつ、やはり既存メンバーや代表者がいかに同人材をチームとして受け入れていくか、その環境を作れるかが重要になります。チームビルディングも様々な方法をインターネットで探すことができますが、スタートアップ企業にとって重要なポイントをここでも2つ紹介します。
- 社員がリアルで集う機会の設定
フルリモートが普及し、同僚とリアルで顔を合わせたことが無いと聞いても違和感がない現代ですが、スタートアップにとってはリアルで顔を合わせる機会を設けることが重要です。大企業においても、様々な業界で職場回帰が一つのトレンドになっていますが、その目的の一つはリアルで顔を合わせて関係性を構築することにあります。スタートアップにおいても、限られたメンバーがお互いの理解を深めることで、グッドプラクティスやクライアント情報の共有、事業の相談が円滑に行われます。
また、スタートアップ企業では仕事の進め方やクライアントとの関係構築などが、マニュアルやルールブックで規定されているケースは少なく、入社した直後のメンバーは進め方の判断に悩むことが想定されます。そういった場合も、リアルで顔を合わせており気軽に相談できる同僚がいると、悩んでいる時間が少なく済み、生産性の高い仕事に取り組みやすくなり、結果としてやりがいや働きがいの向上に寄与します。
全社での定例会議をリアル開催する、定期的に合宿を行う、など集まる理由は様々に設定できるかと思いますので、ぜひ社員がリアルで集う機会を自社にあった方法で検討してみてください。
- 全社的な情報共有と意見交換
スタートアップでは新規事業の決定やビジネスパートナーの獲得といった重要な経営事項がスピーディーに行われる傾向にあります。そのような会社の取組状況や判断を、代表を含む経営層から社内全体に情報をリアルタイムで共有・相談することが、チームビルディングの観点からも重要です。個々や固定されたチームで動くことが多かったり、代表個人が考え動くケースが多い場合、メンバーが企業に所属している意識(エンゲージメント)が薄れてきてしまったり、自身の活動が会社にとって重要ではないと不安になり、モチベーションの低下や離職に繋がってしまうことがあります。それを防ぐため、会社が進めている事業の成功・失敗を共有したり、意見を求めたり、社員の声(不満を含めて)を聞く場を設けることで、社員が会社の経営自体も自分ゴトとして積極的に考えることができます。結果として、社員間や社員と経営層との関係性をより強固にすることができます。
情報共有の方法は、①のとおり全社的に集まる機会を利用することも想定されますが、リアルタイムや高頻度の情報共有においては、チャットツール等での共有も便利です。現在は、様々なチャットツールがあるため、それらをうまく使いこなし、固定されたメンバー同士の会話だけでなく、会社全体のチャンネルやスレッドが機能することを意識して運用すると社員のモチベーションを高く保つことができます。
このように、メンバー間での相談のしやすい環境や代表や経営層とのコミュニケーションも取りやすい環境は、心理的安全性を高めることにも寄与します。心理的安全性とは、組織内でメンバーが誰に対しても自分の意見や気持ちを安心して発言できる状態を指しますが、スタートアップにおいても、上記の通りメンバーが心理的安全性を確保できているか、を考えていくことが重要になります。
今回は、スタートアップがチームビルディングに取り組むうえで、押さえておくべきポイントを絞ってお話しました。もちろん、各企業の事業内容やメンバーの個性によって、チームビルディングのスタイルも様々な方法があり得るかと思います。それでも、比較的メンバー数が少ない状態で大きな成長を目指すスタートアップにとって重要なポイントは変わらないため、今後会社規模を拡大する際や新たなメンバーを獲得する際には、ぜひ参考にしていただければ幸いです。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
20代のクリエイター仲間と、地方の若者のロールモデルに。人生を楽しむ働き方を長野で実現【後編】先輩起業家インタビューvol.9
起業する。会社を立ち上げる。「創業」と一口にいっても、そのあり方は人それぞれ。同じ選択や道筋は一つとしてありません。魅力的な先輩起業家が数多く活躍している長野県。SHINKIの先輩起業家インタビューでは、創業者の思いやビジョン、創業の体験談や、本音を掘り下げます。
「オンクリは、大きな目標として『若者のための社会を作る』ことを掲げています。でも、今の会社の規模では社会を変えるようなことはまだまだ何もできないので、まずは自分たちの会社の雇用を増やして、幸福度の総量を上げることをすごく意識しています。」
そう語るのは、株式会社オンクリ代表の土屋喬椰さん(つちやたかや)さん。「自由な働き方」を追求するオンクリでは、全員がフルリモート勤務で仕事に取り組みながら、時には自然に囲まれた長野のオフィスに集まり、焚き火を囲んだり、サウナで語らったり、星空を眺めたりと、オフの時間を楽しみながらのびのびと働いています。
インタビュー後編では、高校時代に抱えていた絶望感や、長野での暮らし、今後の展望やチャレンジしたいことについて聞きました。
<お話を聞いた人>
株式会社オンクリ 代表 土屋喬椰さん
長野県東御市に生まれ、プログラミングが学べる専門学校に進学。社会人を1年半経験し個人事業主として独立、2021年にオンクリを設立。趣味はサウナとDIY。
地方での働き方の夢が描けず絶望していた高校時代
――インタビュー前編では起業に至るまでのお話をお聞きしました。「起業したい」というモチベーションはなかったとお話がありましたが、当時は「創業者」に対してどんなイメージを抱いていましたか?
少し話が変わるのですが、高校生の時の僕は将来を考えてすごく絶望していたんです。
――絶望ですか。
はい。具体的にやりたいことや夢がなくて。進路に悩む中で、ただ漠然と「お金持ちになりたい」みたいな感覚がありました。そこで、「一番お金持ちに近い進路って何だろう?」と考えて最初に浮かんだのが、祖父がやっていた農業だったんです。
祖父は農業地帯で大きな畑を持っていたので、「儲かりそうだな」という気がしたのですが、祖父や家族に相談したら「大変な仕事だし、ましてや大学や専門学校に行かずに農業をやるのか」と反対されてしまって。
就職も検討したのですが、高卒で入れる職場がそもそも少なく、あったとしても手取りで13〜14万円ぐらいの仕事しか見つからなかったんです。それは「ちょっと夢がないな」と思って。当時、ホリエモンさんとかひろゆきさんのようないわゆる「IT長者」がよくテレビに出ていたので「ITって儲かるんだ」と思い、エンジニアの道を選びました。
――当時はとにかく「儲かること」がしたいと考えていたと。それはどうしてですか?
自分が絶望していたのは、将来の理想像が身近にいなかったからだと思うんです。でも、もし身近に年収1000万円を稼いでいる先輩がいたら、その人に「どうしたらいいんですか?」って聞けるじゃないですか。僕みたいに、地元の就職先を探して「夢がないなぁ」と思わなくて済む。
――地元の若者が憧れる存在になりたかったのですね。
はい。「お金持ち」と聞くと「とにかく稼いでいて、いい時計をつけていい車に乗っている」みたいなイメージがあると思うんですけど、自分より上の世代のそういう人を見ても、「自分もこうなれるかも」というイメージにはなかなか繋がらないですよね。でも、20代で身近にそういう人がいたら将来のイメージが湧きやすいだろうと思い、最初はお金にこだわっていました。
自由な働き方を実現した上で雇用を増やしていきたい
――「最初は」ということは、独立当初と現在では目指す姿が変わってきているということですか?
はい。最近の若い子たちの話を聞いていると「たくさんお金を稼ぐ」ということ以上に「パソコンがあれば家でもどこでも働ける」とか「休みも自由に取れる」みたいなことに魅力を感じている印象があるんです。なので、今はそこから逆算して、会社としては「大きな利益を生み出す」ことより、「自由な働き方を実現した上で雇用を増やす」ことを中期的な目標にしています。
――なるほど。現在は、自由な働き方を叶える方向に変わってきたのですね。
オンクリは、大きな目標としては「若者のための社会を作る」ことを掲げています。でも、今の会社の規模では社会を変えるようなことはまだまだ何もできないので、まずは自分たちの会社の雇用を増やして、幸福度の総量を上げることを今はすごく意識しています。実際にオンクリで働いてる人にとって、人生の中でオンクリという会社や仕事がどういう役割を果たしてるかが大事だなと。
――そうした目標を叶えていく上で、長野で創業したことは良い選択だったと思いますか?
僕は長野県の東御市出身なんですが、正直「長野が好き」とか「東御が好き」みたいな感覚は正直あんまりなくて。でも、「自然が好き」とか「プライベートも楽しみたい」みたいな人にとって、長野県はすごくいい場所だと思います。
僕らのオフィスがある佐久市の祖父の土地はすごくいい場所なんです。山の方にあって、四方を畑に囲まれていて、夜はきれいな星空が見えます。外に出る営業のない日は、佐久のオフィスで仕事をしながら、友達や仲間とみんなで集まって焚き火をしたりとか、畑仕事をしたり、庭に作ったサウナで汗をかいたりしていて。昨日も薪ストーブを使って、ダッチオーブンで無水カレーを作りました。
――とても素敵な暮らしを実現されていますね。
僕らと同じ暮らしを都市部でやろうとするのは難しいと思うので、そういう意味では長野で開業して良かったと思います。
今後は、オンクリの事業とは別軸で、「若者の居場所作り」にも取り組んでいけたらと考えています。
――詳しく教えてください。
中高生の中には、不登校の子や、「学校が合わないな」と感じている子たちがいると思うんです。そういう子たちにとって「こうなれるかも」みたいなモデルが必要だと思っていて。
そこで、僕らの「暮らし」の部分であったりとか、休める場所みたいなものを彼らに提供するために、オフィスの付近に、誰もが立ち寄れる飲食店や、宿泊もできて焚き火もできる小屋を作ろうと計画しています。
――地方でフルリモートの仕事をしながらのびのび働く大人と、地元の若者との接点を作ろうとしているのですね
おっしゃる通りです。「こんな生き方・働き方もある」というモデルかつ、モヤモヤを抱えている若者たちの受け皿になれたらいいなと思っています。
目指すは一億円規模。長野の暮らしを満喫しながら、しっかり働きしっかり遊ぶ
――これからの目標や、今後チャレンジしたいことを教えて下さい。
現在は「3期以内に売上を1億まで伸ばす」ことを目標にしています。なぜかというと、僕たちは自由な働き方を追求した上で雇用を増やしたいと考えているからです。1億円規模の仕事を受ける器があれば、地方を拠点にしている駆け出しのフリーランスの人など、いろんな人に仕事を頼めると思うんです。そういう意味で、まずは利益をしっかり作ることが今の目標です。
さらに長期的なスパンで言うと、そうして現在の事業で出た利益を次の事業に回したいと考えています。地方では、「利益が出ていてすごく魅力的な事業なのに、後継者がいないから続かない」みたいな話がよくあると思うんです。今のオンクリは、若者を集められる箱になってきているので、そういった後継者不足に悩んでいる事業を僕たちで買い取って、地方の20〜30代の若い人たちを雇い、引き継いだ事業を運営して活性化させていく、という動きに繋がるような役割を果たせるのではないかと。
――理想的な働き方をオンクリで叶え、さらに地方企業の課題を解決して新しい受け皿も増やしていく。
そうですね。最初に掲げた「すべて一貫してできる制作会社を作る」というのも大事な目標ですが、地方の制作会社の事例をみていると、売上1億円くらいが上限だなと。なので、1億円を達成した時点で、次の挑戦をしてみたいと考えています。
――最後に、長野で創業しようと悩んでいる人、もしくは法人化をするか悩んでいた当時の自分に一言メッセージをお願いします。
僕は、死ぬほど働きたい人が長野にいる意味はあんまりないと思っています。どうせめちゃくちゃ働くなら、もっと稼げるところで働いた方がいいと思うので。でも長野なら、自然に囲まれて仕事ができて、土日もしっかり休んで、友達と遊ぶ暮らしが実現できる。「自然が好き」とか「人生を楽しみたい」みたいな、プライベートも楽しみたい人であれば、起業をする上で長野県でというのはすごくいいところだと思います。
もし起業する前の自分に言うとしたら、 「めっちゃ頑張って仕事するのもいいんだけど、ちゃんと長野にある魅力を目を向ければプライベートも楽しめるよ」みたいなことかなと思います。せっかく長野を選ぶのであれば、「頑張って休まずに自己研鑽する!」みたいな感じよりかは、ちゃんと休んで暮らしを満喫した方がいいんじゃないかな?と。
これからも僕らなりに、「地方で仕事をしながら楽しく暮らしている」人のロールモデルになることを目指していきたいと思います。
株式会社オンクリのHP https://onkuri-web.com/
20代のクリエイター仲間と、地方の若者のロールモデルに。人生を楽しむ働き方を長野で実現【前編】先輩起業家インタビューvol.9
起業する。会社を立ち上げる。「創業」と一口にいっても、そのあり方は人それぞれ。同じ選択や道筋は一つとしてありません。魅力的な先輩起業家が数多く活躍している長野県。SHINKIの先輩起業家インタビューでは、創業者の思いやビジョン、創業の体験談や、本音を掘り下げます。
「法人化することは、早い段階から検討していました。個人事業主として一人で独立した頃は、まだ受注できる仕事の量やできることも限られていましたが、いずれはデザイナーやエンジニア、マーケターといったクリエイターの仲間たちを集めて会社にできたらと」
そう語るのは、株式会社オンクリ代表の土屋喬椰さん(つちやたかや)さん。2022年に長野県佐久市で設立された株式会社オンクリは、ブランド設計からマーケティング施策の設計・実行、クリエイティブ制作・運用までを一貫して行う会社です。代表の土屋さんを含め、社員は全員20代のクリエイター。フルリモートで自由な働き方を追求しています。
インタビュー前編では、就職後1年半で独立を選んだ経緯や、さらにそこから数年で法人化に踏み切るまでのストーリーについて聞きました。
<お話を聞いた人>
株式会社オンクリ 代表 土屋喬椰さん
長野県東御市に生まれ、プログラミングが学べる専門学校に進学。社会人を1年半経験し個人事業主として独立、2021年にオンクリを設立。趣味はサウナとDIY。
20代のクリエーターによる、地道な泥臭いマーケティングを楽しむ制作会社
――まずはじめに、株式会社オンクリの事業内容について教えてください。
株式会社オンクリは、もともとは僕個人の事業として立ち上げ、2022年に法人化をしました。WEB制作・マーケティング支援の事業と、システム開発という主に2つの軸で事業を展開しています。
WEB制作・マーケティング支援の事業は、企業のWebサイトやECサイトの制作、CRMシステム(Cusomer Relationship Management、顧客関係管理システム)の導入支援や、写真や動画といったコンテンツ制作が中心です。後者のシステム開発では、企業の社内で使う業務効率化システムを、完全にスクラッチから開発することができます。
オフィスは佐久市に構えており、僕を含めた20代のクリエイター4名で運営しています。基本的にはフルリモートでの勤務ですが、月に数度オフィスに集まり、自然の中で焚き火やサウナをしながら顔を合わせてコミュニケーションを取る機会を作っています。
――会社のホームページを見ると土や畑仕事といったモチーフが多く、いわゆる制作会社とは少し異なる印象を受けたのですが、これにはどんな理由がありますか?
オンクリは「地道な、泥臭いマーケティングを楽しむ制作会社」を掲げています。
弊社のマーケティングは、いわゆる「SNSでバズる」みたいなことを推している訳ではなくて。それよりも、たとえば顧客情報を一からデータ化したり、WEBサイトをしっかり作り込んで、コンテンツを継続的に更新するといったような、地方の企業にとって必要な「泥臭いこと」を、地道に一緒にやっていきます。
――個人事業主として事業を立ち上げてから、約1年後に法人化を果たしたのはどんな経緯が?
個人事業主として事業を始めてから、よく「マーケティングだけが得意な会社だと制作物が外注だから思い通りにならない部分がある」という話や、逆に「制作会社に頼んで綺麗なサイトが完成したのに全然売り上げが立たないぞ」みたいな悩みを聞いていたので、それらを一貫してできる会社があったらいいんじゃないかと考えるようになりました。
僕ひとりの個人事業として独立した頃は、まだ受注できる仕事のキャパも含めできることが限られていました。ですが当時から、デザイナーやエンジニア、マーケターといったクリエイターたちを集めて会社にできたらすごく良い会社になるだろうなというところまで考えていたので、法人化することは割と早い段階から検討していましたね。
持病を抱えながら会社員として働くことへのもどかしさ
――土屋さんのご自身のキャリアの変遷について詳しく教えてください。
高校卒業後、ITエンジニアの勉強をする専門学校に2年間通いました。専門学校卒業後は、地元のシステム開発やWeb制作をしている会社に就職し1年半ほど勤務し、2021年1月に個人事業主として独立した形です。
――当時から地元・長野で働きたい気持ちがあったのですか?
いえ、特にそういったわけでもなくて。「どこで働くか」というより「何をするか」に重きを置いて就職先を探していました。
当時僕は、「農業」と「IT」という2つの軸を掛け合わせたことがしたかったんです。僕の祖父が農家だった影響で、農業をやりたい気持ちが昔から心の中にありました。ですが、祖父や家族から反対されたので、ひとまずエンジニアの勉強をしたんです。それでもやっぱり農業と関わることがしたくて、両方組み合わせてやっている会社を探してみたら、たまたま長野で見つけたので、そこに就職しました。
――その後1年半で独立されたのは、ご自身でやりたいことが見えてきたといったところでしょうか?
僕には「潰瘍性大腸炎」という持病があり、症状が悪化すると常に腹痛がしてトイレが近いといった状態になってしまうので、出社するのが難しくなってしまいました。それでも会社の理解を得てフルリモートで働いていたのですが、最終的には退職することを選びました。
――そこから個人で独立して仕事を探すのは大変ではなかったですか?
大変でしたね。会社員時代は主にエンジニアやマーケティングの仕事をしていて営業は未経験だったので、最初はどう仕事を取ったらいいのか全くわからなかったんです。独立して3ヶ月は売り上げも立たずただお金が減るばかりなので、とりあえずメールをたくさん送って、アポが取れた企業にひたすら行く、ということを繰り返していました。
そうしたら、独立後4ヶ月目になって初めて前職の月収をポンと超えたんです。その頃から、「これはいけるんじゃないか」と思えるようになりました。半年ぐらい経つ頃には、売り上げが立つようになってきたので、そのまま続けてこられた感じです。
――独立初期の頃から、「地方にトータルで全部できる制作会社があればいいのでは」と考えていたとお話がありましたが、本格的に法人化を進めることになった経緯を教えてください。
個人事業を立ち上げてから半年ほどで、既に自分だけでは回らないような状況だったので、初めは業務委託として同年代の仲間に仕事をお願いしていました。
一人でやるなら個人事業の方が全然良いと思うのですが、自分は最初から「マーケティングや制作を一貫してできる会社を地方に作りたい」という思いがあったので、案件が増えてきて、周りに仕事を任せられる優秀なデザイナーやエンジニアの仲間がいたことから、「仲間たちを雇用して会社にしてしまった方がいいな」と感じるようになり、会社として枠組みを作るために法人化に踏み切りました。
「人を雇用する」というリスクの壁を、高校時代の同級生に触発されて乗り越えた
――「経営者になりたい」とか「創業したい」というよりは、会社の枠組みがあった方がいいな、という思いだったんですね。
そうですね。経営者になろうとは思っていなかったです。
――起業されるタイミングや法人化されてから、県の創業支援に関するサポートは何か受けましたか?
長野県の創業支援の枠で融資を受けています。それから「長野県よろず支援相談室」という県の経営相談みたいな窓口の相談支援を受けました。相談員の方が、たまたま専門学校のときにお世話になった先生だったということもあり、創業初期に相談しに行きました。
創業後の今でもお世話になっていて、例えば顧客の方から補助金についての相談を受けたときなど、県で受けられる補助金や制度について教えていただいています。
――創業当時、身の回りに創業をしている同年代の仲間はいましたか?
以前SHINKIで紹介されていた株式会社Contactの依田は高校時代の同級生です。彼が東京の大学に進学して以降は連絡を取っていなかったのですが、僕が前職でやっていたことや、個人事業主として頑張っていこうとしていたのを、彼の方は知ってくれていたみたいで。
それまでは連絡があってもあまり返さずにいたのですが、ある日急に「俺もちゃんとビジネスを覚えて、これから頑張るんだ」と電話が来たんです。僕もちょうど同じようなことを考えていた時期だったので、そこからよく連絡を取り合うようになって、結果的に同じ時期に起業をしました。
――同級生の仲間に触発された部分もあったのですね。
人を雇用するってリスクもあることじゃないですか。僕はそれで二の足を踏んでいたのですが、依田はまだ事業を始めたばかりの段階でいきなり法人化をしていて。
もともとは、先に僕が個人事業主として独立していたので、依田から「どうやってお金を回してるのか」とか「どうやって仕事を取ってるのか」といった相談を受けていたんです。でも、法人化したのは彼の方が早かった。それを見てちょっとした対抗意識というか、「自分も何かやってやろう」という気持ちが芽生え、法人化を決断しました。
――リスクを感じていた部分もあったのですね。いざ法人化してからは、順調に事業が回っていますか?
なかなか、「ずっと順調です」とはいかなくて。どうしても、あまり仕事がない時期というのは今でもあるのですが、創業者が集まるイベントや、地方の起業展などには積極的に顔を出して、新規の営業活動を何とか少しずつ頑張っています。
インタビュー後編では、「将来に絶望していた」という高校時代のことや長野で起業することのメリット、今後の展望についてお聞きしました。
株式会社オンクリのHP https://onkuri-web.com/
SSSコラム⑧長野県の女性起業家支援の取組紹介
担当:SSSコーディネーター田中
こんにちは、SSSコーディネーターの田中です。
今日は、昨年度から長野県が本格的にスタートした女性起業家支援の取組をご紹介いたします。
突然ですが、皆さんは長野県の現在の人口をご存知でしょうか?
「200万人よりちょっと多いぐらい」というざっくりとした認識をお持ちの方も多いかと思います。私も学生時代の社会科の授業でそのように勉強をした記憶があります。
しかし本年2月、ついに長野県の人口が200万人を下回りました。(R6.9.1現在で1,989,964人)
200万人を下回ったのは1973年以来のおよそ50年ぶりとのことです。
長野県が調査した2000年と2020年を比較した人口増減率(下記グラフ)を見てみると、20歳~34歳までの若い方々の転出超過による人口減少が目立ちます。さらにその中でも、男性よりも女性の方が、その傾向が顕著であるといえます。
※出所:長野県公式HP
こうした中、昨今の人口減少を少しでも抑えていくためには、「女性や若い方々から選ばれる県づくり」が極めて重要です。そのための一つの施策が「女性起業家支援」です。
女性が希望を実現し、自分らしく働くことができる環境を作っていくために、SSSでは女性起業家支援に特化した窓口を令和5年度から設けました。
こちらの窓口では、女性の相談員が起業のご相談を受け付けております。男性の相談員には相談しにくいこと、あるいは女性ならではの意見・アドバイスが欲しい場合には是非、こちらへご相談ください。(相談員のプロフィールや相談方法は以下の女性起業家支援専用ページ「SOU」をご覧ください。)https://shinki-shinshu.jp/sou/
また、今年度は、県内4地域(北信・東信・中信・南信)ごとに女性起業家同士のコミュニティ構築のためのイベントを開催しています。
先輩女性起業家を招いて体験談を聞いたり、ご飯を食べながらアイデアを語り合ったり、様々な取組を通して、仲間づくりの機会にしていただけます。
▼こちらは、先日軽井沢町で開催したイベントです。起業に役立つノーコードツールの使い方を学びながら、美味しいランチ・コーヒーと一緒に交流を深めました。
- まだ具体的な事業計画はできていないけど、なんとなく起業に興味がある、
- 同じ志を持った仲間を見つけたい、
- 起業に関する情報を収集したい、
などなど、どのような目的でも結構ですので、相談窓口やイベントへお気軽に足をお運びください。
なお、イベント情報は公式FacebookやInstagramに掲載しております。
https://www.facebook.com/ShinshuStartupStation
https://www.instagram.com/shinshu_startup_station
SSSは女性の皆さんの夢の実現を応援させていただきます。
お気軽にご利用ください。
【イベント開催】Shinshu Startup Meet up day in 関西
県内全エリア
長野県内のスタートアップと関西のスタートアップ・大企業・フリーランスの交流イベントを開催します。当日は、具体的な人材獲得ニーズ等を持った長野県内スタートアップがピッチいたします。自然豊かな長野県での仕事や、スタートアップとの連携にご関心をお持ちの方のご参加をお待ちしております。
【日時】2024年11月22日(金)18:00~20:30(17:30開場)
【場所】ナレッジサロン(大阪府大阪市北区大深町3-1 グランフロント大阪北館7)
【登壇企業名 /登壇者役職氏名】
▶︎ 株式会社地元カンパニー/代表取締役 児玉光史 氏
▶︎ mui Lab株式会社/CTO 久保⽥拓也 氏
▶︎ 株式会社戸隠/取締役支配人 戸谷利志明 氏
▶︎ VFR株式会社/代表取締役社長 蓬田和平 氏
〇プログラム
17:30 | 開場 |
18:00~19:30 | イベント開始・開会・長野県の支援紹介・ピッチ・閉会 |
19:30~20:30 | 交流会 ※同会場にて実施 |
詳細リンク
“想い”を事業にしていく力
県内全エリア
本セミナーではYouTube登録者数10万人超の人気クリエイター寺田真弓さん(株式会社ステアーズ 代表取締役)をお呼びし、「想い」をどのようにビジネスとして形にしていくかを寺田さん自身の経験をもとにお話します。カジュアルなトーク形式で、ユニバーサルツーリズムや絵本製作、YouTube活動を通じた事業化のポイントを掘り下げ、起業のヒントや実践的なアドバイスを提供します!
【概要】
日 時:11月21日(木)12時〜13時
参加費:無料
場 所:オンライン(zoomウェビナー)
https://zoom.us/webinar/register/WN_3ENxjXK0QnGX0P8ZuDFXSg
ゲスト:寺田真弓さん
https://teradake.com/terada_mayumi/
【こんな方におすすめ!】
✔️起業を考えている方
✔️女性の働き方や支援に関心のある方
✔️これからの働き方にモヤモヤしていてヒントを得たい方
ぜひご参加ください!!
詳細情報
起業女子×企業女子向け〜コミュニケーションの強みとモヤモヤを理解してより良い関係を育む〜
県内全エリア
長野発!働く女性が仲間を作れる新しい場”Biotope”(ビオトープ)。
仕事以外の場所で、趣味で繋がる、想いで繋がる、今の自分にもう一つ、
好きなことを、一緒にできる、そんな仲間と出会える場所。
働く女性が誰でも参加できる交流会in長野です。
■起業女子×企業女子向け〜コミュニケーションの強みとモヤモヤを理解してより良い関係を育む〜
「自分の強みってなんだろう?」
「何かにモヤモヤしているけどなんでだろう」
そう感じることはありませんか?
今回はそんな疑問を解消すべく、コミュニケーションにおける「強み」と「モヤモヤ」を短時間で明確にし、実践的な改善方法を学ぶ90分のワークショップを行います。
無意識に行っている自分のコミュニケーションの特徴を知り、自己認識を深め、
良い関係づくりを育むためのコミュニケーションのズレに気づき、
より良いチーム作りの具体的なステップを探ります。
◾️こんな方にオススメ
・女性個人事業主、女性フリーランサー
・女性チームリーダー、女性マネージャー
・人間関係の改善を目指す女性ビジネスパーソン
◾️こんなことが発見できます
・コミュニケーションの強み、それを活かす方法
・「モヤモヤ」やズレの原因となっているもの
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・すぐに実践できるコミュニケーションの改善策
◾️概要
・2024年11月8日(金)19:30(19:00受付) -21:00 終了
・会場 シソーラス株式会社[DX center 長野市鶴賀権堂町2312−1]
・参加費 無料
・参加者数 20名
・お申し込み https://biotopesou02.peatix.com/
◾️プログラム
1. オリエンテーション・インスピレーショントーク(10分)
2. 強みの発見ワーク(20分)
3. 「モヤモヤ」発見ディスカッション(20分)
4. 無意識の思い込みとズレの気付き(20分)
5. アクションプラン作成(15分)
6. まとめと質疑応答(5分)
詳細リンク
起業女子×企業女子向け〜コミュニケーションの強みとモヤモヤを理解してより良い関係を育む〜
幼馴染3人で地元のゲストハウスを事業承継。観光業を通して地方創生を目指す【後編】先輩起業家インタビューvol.8
起業する。会社を立ち上げる。「創業」と一口にいっても、そのあり方は人それぞれ。同じ選択や道筋は一つとしてありません。魅力的な先輩起業家が数多く活躍している長野県。SHINKIの先輩起業家インタビューでは、創業者の思いやビジョン、創業の体験談や、本音を掘り下げます。
「本業と並行しながら長野で起業をすることに対しては、もちろん不安はありました。ですが、やはり仲間がいたことが大きかったです。仮に事業が上手くいかなくても、3人なら一緒に楽しめるだろうという信頼がありました。不安はゼロではなかったけれど、期待やわくわく感の方が大きかったですね。」
そう語るのは、長野駅前にあるゲストハウス「Local Knot Backpackers」を運営する鈴木敦也(すずきあつや)さん。松本出身の幼馴染3人組で長野駅前のゲストハウスを事業承継し、それぞれが本業と並行しながら、地元長野で宿を運営し、地方創生に貢献する新たな挑戦を続けています。
インタビュー後編では、実際に引き継いだ後の手応えや、本業を続けながら起業することにどう向き合ったのか、今後の展望についてお聞きしました。
<お話を聞いた人>
Local Knot Backpackers
■藤澤厚太/ KOTAさん
1997年生まれ。長野市/松本市出身。「人や組織の可能性を最大化する」ことをキャリアビジョンとして掲げて活動。ベンチャー企業で戦略/新規事業開発コンサルタントとして活動すると同時にCoach A Academiaを経てコーチとしても活動している。
■堀内勇吾/ UGOさん
1997年生まれ。松本市出身。大学進学を機に東京へ上京。大学在学中はゼミや学園祭実行委員、バイトに心血を注ぎ、密度の濃い学生生活を送った。大学卒業後は2020年に日本の大手総合化学メーカーへ入社。2023年11月にエンジニア人材サービス会社に転職。
■鈴木敦也/Tsuyaさん
1997年生まれ。松本市出身。高校卒業後、管理栄養士を目指し上京。大学在学中は資格勉強の傍ら、飲食店でのアルバイトや留学を通じ様々な「食文化」に触れてきた。現在は都内で管理栄養士として働いており、商品開発やマーケティングに従事。
本業で培ったスキルと経験が、起業の後押しとなった
――インタビュー前編では、たった1ヶ月で事業承継の準備をされたとお話がありましたが、その際に県のサポートや助成金などは利用されましたか?
藤澤さん:とにかく早く動く必要があったので、長野県からのサポートをしっかり調べる時間はほとんどありませんでした。でも、本業で事業計画を検討した経験があり事業の実現可能性のポイントを押さえていたため、日本政策金融公庫へ融資申請する際にも、特に大きな問題なく準備を進められました。今後事業を成長させていくにあたり、長野県からのサポート等もうまく活用していければと思っています。
――本業の知識があったおかげでスムーズに進んだんですね。事業継承後の引き継ぎ作業はどうでしたか?
堀内さん:そうですね。バタバタはしましたが、何とかやり遂げました。契約に関するお金の振込が2月中に済み、3月から4月は毎週末長野に通ってオペレーションや実務の引き継ぎトレーニングを受けました。そして5月にはすべての引き継ぎが完了し、自分たちだけでの運営が始まりました。
――地方では人材確保が難しいと言われますが、働いてくれるスタッフはすぐに見つかりましたか?
藤澤さん:基本的には、もともと働いていたスタッフの方々に引き続きお願いしました。その上で、アルバイトとして大学生やワーキングホリデーで来ていた外国籍の方を数名採用しました。それに、僕らオーナーが常に現場にいるわけではないので、新たに現場ディレクターとして、大学時代の友人を雇いました。彼は長野に住んでいて、信頼できる存在だったので助かっています。
――地元で起業したからこそできる採用のあり方ですね。引き継ぎのあとは、どんなステップを踏みましたか?
藤澤さん:次に取り組んだのは、ゲストの方により快適に宿泊してもらうための施設改修です。「森と水バックパッカーズ」としての運営は順調に続けられていたものの、「ジャーナリングするゲストハウス」という新しいコンセプトを実現するためには、いくつかの課題がありました。築45年という古い建物で、壁のひび割れや床の凹凸、天井のシミなど、直さなければならない箇所が多かったんです。
堀内さん:そこで、改修資金を集めるためにクラウドファンディングを行いました。本当にありがたいことに、約200名以上の方にご支援いただき、必要な資金を集めることができました。驚いたのは、その内95%近くが友人や知人だったことです。まだ引き継ぎ間もない頃からこれほど多くの方々が応援してくれたのは、自分たちの活動が認められたことでもあり、励まされました。
鈴木さん:リターンとしてお礼の手紙を書いていると、地元の同級生や、久しく会っていない友人の名前も出てきて、とても嬉しかったですね。
藤澤さん:僕らの新しい挑戦を信じてくれたことが、とても嬉しかったです。これからもその期待に応えられるよう、深呼吸ができる空間を作り続けたいと思っています。
会社員を続けながらの起業。仲間がいたから不安を乗り越えられた
――「森と水バックパッカーズ」と出会ってから、一気に事業が進んでいったのですね。会社員として働きながら起業するというのは、不安が大きかったのでは?
堀内さん:最初は「経営がうまくいくのか」「口約束で終わってしまわないか」という2つの不安がありました。後者については「僕たちなら大丈夫だろう」と思っていたんですが、経営面では正直すごく不安でした。でも、藤澤が本業で新規事業開発をしていたので、「彼がいれば何とかなる」と感じるようになりました。
鈴木さん:僕も不安はありましたが、やはり2人の存在が大きかったです。これまでずっと一緒に遊んでいたので、仮に上手くいかなくても、一緒に楽しめるだろうという信頼がありました。不安はゼロではなかったけれど、期待やワクワク感の方が大きかったですね。
ただ、実際に事業を継承して正式にオーナーになったときは、プレッシャーを感じ、「もうやるしかない」という気持ちになりました。今は楽しんでやれているので、本当にやって良かったと思っています。
――藤澤さんは本業の経験があるとはいえ、初めての起業に対して不安はありませんでしたか?
藤澤さん:もちろん不安はありました。でも、僕はリスクを分解して考えるタイプなので、一つ一つ不安要素を洗い出し、クリアすれば前に進めるようにしていきました。最終的には「少しの勇気さえあればやれる」という段階まで不安を減らしたことで、逆に、「ここまで準備してやらない方がリスクだ」と感じるようになって。「この挑戦をしなければ、一生何者にもなれない」という思いが大きな原動力になりましたね。
――不安を具体的に分解することで、「やらない方がリスクだ」と感じられるようになったんですね。
藤澤さん:そうです。これも本業での経験が役立ちました。要点を押さえて、それをクリアすれば道が開けるという確信が持てたので、その後の不安もかなり軽減されました。
――地元長野で起業するという選択は、改めて振り返っても正解だったと思いますか?
鈴木さん:東京に行ったからこそ、長野の良さが見えてきた部分があります。長野を出る前は、「長野には何もない」と思っていましたが、東京に行ってみると、東京もお金がなければ何もできないんだと気づいたんです。そう考えたら「何もないなら、自分で作ればいい」と思えるようになり、それから長野のほどよいローカル感が最高だと感じるようになりました。今では長野が大好きです。
堀内さん:長野の良さは上京した時から知っていましたが、創業を経てさらに魅力的な街だと思いました。帰る度に好きになる、そんな街です。そんな自慢の街をもっと色んな人々に知ってもらえるよう、みんなで楽しみながら進んでいきたいです。
藤澤さん:長野にはUターンする人も多いのですが、僕たちのように東京を拠点にしながら二拠点生活をしている人は少ない気がします。僕たちの強みは、東京で得たものを長野に還元できることだと思います。この強みを活かして今後も頑張っていきたいですね
半歩も一歩。歩み続けることが前に進む唯一の手段
――改めて、事業が軌道に乗り始めた今の心境を教えてください。
鈴木さん:一つ大きな「武器」を手に入れた感じですね。目に見える形で「これをやっている」という看板ができたことで、自分たちの活動がはっきり示せるようになりました。まだ目指しているゴールには遠いですが、少し肩の荷が下りた気がします。
堀内さん:僕も、過去と比べるとだいぶ進展があり、落ち着いてきました。ただ、これからを考えると、まだまだやることが山積みですね。僕たちの最終的なゴールは、ゲストハウスを運営するだけではなく、地方経済を活性化させて地域を再生すること。まだその道のりは長いです。
藤澤さん:僕も2人と同じ意見です。お客さんが楽しんでくれている姿を見ると本当に嬉しいし、僕たちもこの場所に来るのが楽しみです。このゲストハウスは、僕たち自身にとっても「居場所」なんです。でも、堀内が言ったように、僕たちが目指しているのはもっと大きなものなので、このゲストハウスで終わるつもりはありません。事業をさらに拡大していきたいですね。今は、まだ0歩目といったところです。
――今後チャレンジしていきたいことはありますか?
藤澤さん:ゲスト同士やスタッフとの繋がりだけでなく、地域住民とももっと繋がれるようにしていきたいと思っています。たとえば、今は長野県立大学の学生さんと一緒に読書会を企画したり、信州大学の建築学科の学生さんたちとリノベーションイベントの企画を進めています。今後も、地域の方々にも来てもらえるようなイベントを増やしていきたいですね。
鈴木さん:せっかく長野で拠点が一つできたので、長野の豊かな食材を活かし、地産地消をテーマにした商品開発をしていきたいです。農家さんと繋がりをつくり、規格外の食材を使って、何か新しい商品が作ったり、食にまつわるイベントができたらいいなと考えています。
――最後に、長野での起業を目指しこれから動き出そうとしている方に向けてメッセージをお願いします。
藤澤さん:僕が伝えたいのは「何者かになりたいなら、一歩の勇気を持つこと」です。僕自身もその一言で動き出すことができました。
堀内さん:一人で悩んでいるなら、仲間を作ることですね。仲間がいれば不安なこともお互いにカバーし合えるし、何より一緒にやることで楽しさが100倍になります。
鈴木さん:僕は「半歩の積み重ね」を大事にしてほしいと思います。人によっては最初の一歩が難しいと感じることもあるかもしれませんが、仲間を集めたり、現場に足を運んだりして、少しずつ動き出すことで道は開けます。僕もその半歩の積み重ねでここまで来られました。なのでみなさんもぜひ「半歩の積み重ね」を大切にしてください。
Local Knot BackpackersのInstagram https://www.instagram.com/local_knot_bp/
幼馴染3人で地元のゲストハウスを事業承継。観光業を通して地方創生を目指す【前編】先輩起業家インタビューvol.8
起業する。会社を立ち上げる。「創業」と一口にいっても、そのあり方は人それぞれ。同じ選択や道筋は一つとしてありません。魅力的な先輩起業家が数多く活躍している長野県。SHINKIの先輩起業家インタビューでは、創業者の思いやビジョン、創業の体験談や、本音を掘り下げます。
「東京で本業を続けながら長野に通う生活を始めたのは、地元を盛り上げたいという思いからでした。幼馴染の3人で、力を合わせてゲストハウスの運営に挑戦することになるなんて、夢にも思わなかったです。」
そう語るのは、長野駅前にあるゲストハウス「Local Knot Backpackers」を運営する藤澤厚太さん(ふじさわこうた)さん。幼馴染の堀内勇吾(ほりうちゆうご)さん、鈴木敦也(すずきあつや)さんと一緒に、まったくの未経験から事業承継による起業を果たしました。それぞれが本業と並行しながら地元長野で宿を運営し、地方創生に貢献するための挑戦を続けています。
インタビュー前編では、3人がそれぞれのキャリアを活かしながら「Local Knot Backpackers」を立ち上げるまでのストーリーや、スピード感が鍵となった事業承継による起業について聞きました。
<お話を聞いた人>
Local Knot Backpackers
■藤澤厚太/ KOTAさん
1997年生まれ。長野市/松本市出身。「人や組織の可能性を最大化する」ことをキャリアビジョンとして掲げて活動。ベンチャー企業で戦略/新規事業開発コンサルタントとして活動すると同時にCoach A Academiaを経てコーチとしても活動している。
■堀内勇吾/ UGOさん
1997年生まれ。松本市出身。大学進学を機に東京へ上京。大学在学中はゼミや学園祭実行委員、バイトに心血を注ぎ、密度の濃い学生生活を送った。大学卒業後は2020年に日本の大手総合化学メーカーへ入社。2023年11月にエンジニア人材サービス会社に転職。
■鈴木敦也/Tsuyaさん
1997年生まれ。松本市出身。高校卒業後、管理栄養士を目指し上京。大学在学中は資格勉強の傍ら、飲食店でのアルバイトや留学を通じ様々な「食文化」に触れてきた。現在は都内で管理栄養士として働いており、商品開発やマーケティングに従事。
「人々の想いが集まる場所」としてのゲストハウスを長野に作りたい
――まずはLocal Knot Backpackersの事業内容について教えてください。
藤澤さん:「Local Knot Backpackers」は、長野駅前にあるゲストハウスです。2024年の5月に、事業承継により「森と水バックパッカーズ」を引き継ぎました。3人とも東京で本業を続けながら、現地のスタッフと共に運営を行っています。現在は、地域の学生や若者を巻き込みながらDIYによる改修をしつつ、コンセプトのリブランディングを実行中です。
――ゲストハウスとは?
堀内さん:ゲストハウスというのは、旅館やホテルとは少し違い、旅人同士の交流を重視した宿泊施設です。例えば、「Local Knot Backpackers」の客室は、相部屋のドミトリーと個室の2種類となっており、共用部のリビングで他の旅人と自然に会話する機会がたくさんあります。ただ泊まるだけではなく、旅の途中で、自分と向き合う時間や他のゲストと深い会話が生まれるような環境作りを大切にしています。
長野は善光寺があり、古くから「人々の想いが集まる場所」です。僕たちは、その土地の力を活かしながら、このゲストハウスを「ジャーナリングするゲストハウス」として提供したいと思っています。
――「ジャーナリング」という言葉はあまり聞き慣れないのですが、どういったものですか?
藤澤さん:ジャーナリングとは、紙とペンを使って「今この瞬間に感じていること」を書き出すことです。頭に浮かんだことをそのまま書くことで、自分の感情や状態に気づけるんです。まさに「書く瞑想」とも言われるものですね。
鈴木さん:ここを訪れる人たちが、心の中を整理し、自分と向き合う時間を持てるようにすることが私たちの目標です。そのため、今後はノートやペンを常備し、ジャーナリングしたものを保管し、再訪した時に前回何を考えていたかを確認できる仕掛けを作れるように検討中です。また、他の旅人や、地域の方や観光客、私たちスタッフとの交流も促進し、自分の想いを語り合える場にしたいと思っています。
3人で旅をするの中で生まれた、「地方創生」への思い
――そもそも、皆さんはどのような経緯でゲストハウスの運営を始めることになったのでしょうか?きっかけを教えてください
藤澤さん:僕たち3人は松本出身の幼馴染で、それぞれ東京の大学に進学しました。上京後も自然と集まり、一緒に地方を旅行することが多かったんです。福島を旅行した時、みんなで湖のほとりのサウナに行ったのですが、外で深呼吸した瞬間がすごく印象的で。「やっぱり、自然の中で深呼吸するっていいよね」という話になり、「それなら地元・長野で何かやりたいよね」と考え始めたのがきっかけです。
堀内さん:あの瞬間は、僕たちにとって本当に大きな転機でした。それまでも「長野で何かやりたい」とは思っていたんですが、なかなか具体的なアイデアが出なくて。それが、福島での体験で「これだ!」と感じたんです。その後は、隔週でミーティングを重ね、「長野でゲストハウスをやろう」という方向性が固まっていきました。
――皆さん自身が、旅をする中できっかけを得たのですね。宿泊業以外にもいろんな選択肢があったと思いますが、どうして最終的にゲストハウスを選んだのでしょうか?
藤澤さん:方向性が固まるまでは、本当に試行錯誤の連続でした。最初は、古民家を改修して何かやろうだとか、地域の食材を活用した地産地消の商品開発も考えていました。実際に現場を見に行ったり、試作品を作ってみたりする中で、徐々に僕たちが目指すのは「地域経済や地方創生に本当に貢献できることがしたい」「深呼吸ができる場を作りたい」ということだと言語化できるようになりました。
そこで、人口が減少していく中で、地方を活性化させるにはインバウンドや外需が必要だと考え、旅行業に行き着いたんです。旅行業の中でも、宿泊施設はその核になると感じたので、ゲストハウスを選びました。
「森と水バックパッカーズ」との出会い
――最初から事業承継という形での起業を考えていたのでしょうか。
藤澤さん:いや、最初は古民家を使った宿泊施設を考えていたんです。でも、古民家は駅前にはほとんどないし、移動の利便性も考えて、駅前での運営が現実的だということになりました
そこから物件を探すうちに、事業承継のプラットフォーム「バトンズ」にたどり着きました。物件ごと引き継げる事業承継であれば、地方課題となっている空き家問題の解消や事業承継問題で困っている方の課題解決にもつながるなと。
――観光業で地方を活性化させたいという思いと、事業承継による地域課題の解決が結びついたわけですね。
藤澤さん:そうです。それに「深呼吸」というコンセプトも大きかったですね。自然の中での深呼吸も素晴らしいですが、僕たちは社会的なつながりの中でリラックスすることも重要だと思っていて。
「Local Knot Backpackers」という名前にも、そうした「社会的な結びつき」を大切にする意味が込められています。一棟貸しの古民家だと、そういった人々の交流が生まれにくいんですよね。ゲストハウスなら、ゲスト同士やスタッフとの交流が自然に生まれる。僕たちの目的に合う形だと感じました。
――たしかに、ゲストハウスならいろんな人との交流が楽しめますね。物件探しはすぐに見つかりましたか?
藤澤さん:いや、物件探しには時間がかかりました。数か月いろんな案件を見ていましたが、なかなか条件に合うものがなくて。でも、「森と水バックパッカーズ」を見つけたときは、直感的に「これだ!」と思いました。すぐに3人で現地を見に行き、「ここでやろう」と即決しました。
――その後の交渉や引き継ぎはスムーズに進みましたか?
藤澤さん:実は、僕ら以外にもう一人経験豊富な候補者がいたんです。でも、前オーナーの方が、体調が崩されていたこともあり、とにかく早い事業承継を希望されていて。僕らには経験も知識も資金もなかったので、「情熱とスピードで勝負しよう」と決めて、「1ヶ月で資金を用意します」と伝えました。その約束を守って、実際に1ヶ月後に引き継ぎに必要な資金を用意したんです。
――経験がない中でも、情熱と行動力でチャンスを掴んだというわけですね。
藤澤さん:はい。本当に情熱とスピードが鍵でしたね。
インタビュー後半は、実際に引き継いだ後の手応えや、本業を続けながら起業することにどう向き合ったのか、今後の展望についてお聞きしました。
Local Knot BackpackersのInstagram https://www.instagram.com/local_knot_bp/
”起業家魂を信州から世界へ”信州ベンチャーサミット
県内全エリア
長野県では、創業しやすい環境づくりを推進するため、起業家が自身の事業構想を発表する信州ベンチャーサミットを毎年開催しています。
多くの皆様の御参加をお待ちしております。
2025年1月15日(水)までに下記URLの登録ページからお申込みください
https://tohmatsu.smartseminar.jp/public/seminar/view/54600
【日時】2025年1月16日(木)13:00~18:00(12:30受付開始)
【場所】長野市芸術館 リサイタルホール(B2階)(長野市大字鶴賀緑町1613番地)
【定員】290名(先着順、参加は無料)
※駐車場(有料)には限りがありますので、できるだけ公共交通機関をご利用ください
〇プログラム
13:00 | 開会・主催者スピーチ |
13:15 | 基調講演① 長野県 県政参与 千本 倖生 氏「AI時代における戦略的マネジメントフィロソフィー」 |
14:20 | 基調講演② 株式会社 KURABITO STAY 代表取締役社長 田澤 麻里香 氏「SAKEの佐久を世界に!世界初の酒蔵ホテル®の挑戦」 |
15:00 | 起業家ピッチ |
17:05 | 起業家ピッチ表彰式 |
17:30 | 交流会(18:00閉会) |
〇起業家ピッチプレゼンターの募集
◆応募資格
長野県内に拠点・事業所を有す又は県内で事業を展開する(予定含む)起業家
◆人 数
9名
◆応募方法
電子メールでエントリーシートを提出(詳細は別添のチラシをご参照ください)
提出先: tvs-nagano@tohmatsu.co.jp
◆応募締切
2024年11月30日(土曜日) 24時必着
◆選考方法
書類選考による
◆結果通知
2024年12月9日(月曜日)※予定
◆表彰内容
以下の賞を表彰予定
賞 | 表彰内容 |
信州ベンチャーサミット グランプリ | 総合的に評価が高いこと |
ソーシャル・イノベーション賞 | 地域課題に密着し、大きな社会変革をもたらすこと |
インパクト・テクノロジー賞 | 技術に強みを持ち、市場に対して大きなインパクトを与えること |
マーケティング・ストラテジー賞 | 優れた競争戦略を持ち、高い事業成長が見込めること |
ビジョナリー賞 | 多くの人に共感を得られるビジョンを持つこと |
Startup Weekend松本
飯山エリア
長野エリア
大町エリア
松本市
木曽エリア
飯田エリア
伊那エリア
諏訪エリア
上田エリア
佐久エリア
全世界で「起業家を生み出す場」として展開する「Startup Weekend」が長野県松本市にて初開催!
スタートアップウィークエンド(以下、SW)とは、週末を活用してアイデアをカタチにする「スタートアップ体験イベント」です。
SWは初日の夜、アイデアを発表するピッチから始まります。アイデアに共感したメンバーと共にチームを組み、最終日の夕方までにユーザーエクスペリエンスに沿った必要最小限のプロダクト、そしてビジネスモデルを一気に作り上げます。
実は過半数の方が一人で初めて参加する方々です。特定の知識やスキルがなくとも、またアイデアをお持ちでなくともスタートアップをリアルに体験することが出来ます。初参加でも心配ありません。
皆さまのご参加を、心よりお待ちしています!
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