SSSコラム⑩信州での観光業・宿泊業の起業にあたり
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担当:SSSコーディネーター佐藤(中小企業診断士)
こんにちは、SSSコーディネーターの佐藤です。
(※本コラムの内容は執筆者個人の見解であり、長野県やSSSの公式見解ではありません。)
皆さん、最近はどこかに観光で訪れたり、旅館ホテルなどに宿泊されましたか?
旅の目的や誰と行くのかによっても、訪れる場所や泊まる施設の選び方は様々かと思います。またBtoCビジネスである観光業・宿泊業は、それを営む事業者自身も一顧客となり得るため、起業にあたっては「自分だったらどういう体験や価値提供を受けたいか」という顧客視点に立ってサービス内容等を考えることもできるのではないでしょうか。
信州は美しい自然環境や歴史的な観光名所など、豊富な地域資源がある場所として知られています。その魅力を活かした観光業・宿泊業のビジネスは、多くの創業希望者にとって魅力的な選択肢となっており、SSSにおいても観光・宿泊関連のご相談を多くお受けします。以下に、創業にあたり抑えておきたいポイントをご紹介します。
まず、ビジネス計画の作成が重要です。事業の目的やビジョン、ターゲット市場(物理的な場所を含む)の分析、競合状況の把握など、具体的な計画を立てることが成功の基盤となります。信州の観光業・宿泊業は競争が激しいため、差別化戦略や独自の価値提案を考えることも重要です。
次に、資金調達の方法を検討しましょう(詳しくは「資金調達」のコラムを参照)。新規創業の場合、銀行からの融資や地方自治体の支援制度を活用することが一般的です。また、事業承継という手法もあります。ゼロイチではなく、既存の宿泊施設等を買収するなどの方法もあります。検討にあたっては「事業承継・引継ぎ支援センター」や民間のM&Aプラットフォーム(TRANBIやBATONZなど)を利用することも有用です。
さらに、地域との協力関係を築くことも重要です。地元の観光協会や商工会議所などの組織と連携し、地域の特産品やイベントとのコラボレーションを図ることで、地域の魅力を最大限に引き出すことができます。また、地元の人々との関係を築くことも大切であり、信頼関係を構築することで地域の支持を得ることができます。
マーケティング戦略の構築も欠かせません。信州の観光業・宿泊業は季節によって需要が異なるため、需要の波に合わせた戦略を立てることが重要です。例えば、冬季はスキーリゾートや温泉旅館への需要が高まるため、その時期に合わせたプロモーションやイベントを企画することが有効です。
創業希望者は、信州の地域特性や需要動向を十分に調査し、自身のビジネスアイデアに合わせた戦略を練ることが重要です。
信州の観光業・宿泊業は、地域の魅力と資源を最大限に活かしたビジネスが求められています。自然環境や文化遺産を活用した体験型プランの提供や、地元食材を使用したグルメツアーの企画など、地域の特色を生かしたサービスを提供することが成功の鍵となります。また、最新の技術やインターネットを活用したマーケティングや予約システムの導入も重要です。
先ほども書いた通り、信州は四季折々の美しい景色や豊かな自然があり、多くの観光客・宿泊客が訪れます。しかし、競争も激しいため、ビジネスの差別化、「尖った」サービス・顧客体験価値の提供が求められます。例えば、バリアフリー対応の宿泊施設やペット同伴可の宿泊施設、サウナも楽しめる施設など、ニーズの多様化に応えるサービスを提供することで、競争力を高めることもできます。
またオペレーション面からも事業コンセプトを検討することも重要です。コストとのバランスの中で、「表は非効率」だけど「裏では徹底した効率化」を目指すのかなど、どこに人手を掛けるのか・掛けないのかのメリハリをはっきりさせることです。
長野県では、信州スタートアップステーションをはじめ、スタートアップ支援・起業創業支援のコーディネーターや相談員が活動しており、創業希望者への支援を行っています。これらの専門家の助言やアドバイスを受けることで、より確かなビジネス計画や戦略を立てることができます。また、地域の商工会議所や観光協会などの組織も、創業希望者に対して支援プログラムや情報提供を行っていますので、積極的に利用しましょう。
信州の観光業・宿泊業ビジネスは、地域の魅力を最大限に引き出し、訪れる人々に素晴らしい体験を提供することが求められます。観光地の開発や宿泊施設の運営は、地域の活性化にも大きく貢献することができます。また観光業・宿泊業ビジネスは顧客の反応がダイレクトに感じられる(打ち手の効果の有無もダイレクトに分かる)ため、非常に面白さがある業種だと思います。個人的には、マーケットインのアプローチも重要ですが、サービス業として創業者自身が「面白い・楽しいと思えること、自身の施設などを使って『遊ぶ』姿勢」を持って様々な特徴あるサービスをプロダクトアウトのアプローチで提供することも必要なのではと思います。
創業希望者の皆さんが、信州の観光業・宿泊業ビジネスの創業に成功し、地域経済の発展に貢献いただくことを願っています。
【SSSW コラム】改めまして、SOUのご紹介と2024の振り返り
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長野県では、「日本一創業しやすい県づくり」を目指し、相談窓口での相談・助言、ホームページやFacebook等による創業支援策などの情報提供、各種創業セミナーの開催、地域の支援機関と連携による支援を行っています。
信州スタートアップステーション(SSS)は、長野県が設置する創業支援拠点です。SSSは、金融機関や商工団体等の創業支援に携わる機関や先輩起業家との連携によるスタートアップエコシステムの中核となり、県内経済を担う次世代産業の創出を目指す拠点です。
SSSの中で、女性に特化した支援活動を、ということで立ちあがったのがSOU(ソウ)です。
「それぞれの女性の、それぞれの起業に。」をかかげ、起業・創業にハードルを感じている方や、事業アイディアのブラッシュアップしたい方など起業に関する相談をはじめ、仕事と家庭・子育てとのバランスで今後の働き方に悩んでいる方など、幅広く女性を支援をしています。
SOUの活動は、大きく分けて2つあります。
ひとつめは、メンタリング(個別相談)です。様々な働き方、生き方を実践している多様なメンターが数多くの相談を受けてきました。2024年度は県外からの相談者が多かったことが特徴です。Iターン、Uターンを見越して「あたらしく始めたい!」という方々のサポートができました。また、1度の相談だけでなく、複数回、中長期的な相談が増えてきました。「異なるメンターとのメンタリングにより、いろいろな視点に気づけた」という話もありました。
ふたつめの活動は、イベントやセミナーです。SOUとしてのイベントだけでなく、メンターのみなさんとコラボ企画としてのイベントも開催しました。イベントでは、参加者のみなさん同士の交流を大事にするなど、地域のコミュニティとなるよう取り組んできました。結果として、イベントを通じて顔見知りになり、応援しあうような関係性も生まれています。
SOUでは、「事業を起こす」ことだけを起業とはしていません。1人ひとりが、それぞれの生き方を体現するきっかけをつくり、伴走してきました。
2025年も、多くの女性が自分の生き方を体現できるよう、支えていきたいと思います。
自分のやりたいことを“伝える”力
県内全エリア

信州スタートアップステーション(SSS)は、起業・創業にハードルを感じている方や、事業アイディアのブラッシュアップしたい方など起業に関する相談をはじめ、仕事と家庭・子育てとのバランスで今後の働き方に悩んでいる方など、幅広く女性を支援をしています。
事業を起こす時、あるいは事業ではなくても自分のやりたいことを伝えて協力者を募ったり、想いを多くの人に知ってほしいとき、皆さんはどうしていますか?
今回は、動画を通じて「伝える」プロの中山望さんを講師にお迎えし、「人に伝えるとは?」というところから、多くの人に伝わる動画作成やSNSのコツをお聞きします。また、その背景にある中山さんがなぜ伝えることを仕事にしているのか、その先で見たい社会についてもお伺いできたらいいなと思っています。
現在埼玉県在住ですが、長野県のご出身。PTA会長、経営者、3児の母、大学講師…などさまざまな顔を持つ中山さんをお迎えしてのランチタイムの60分です!
【イベント詳細】
日時:2024年1月24日(木) 12時~13時
形式:オンライン(Zoomウェビナー)
参加費:無料
お申し込みはこちらからお願いします!
https://zoom.us/webinar/register/WN_85wzR_CtRL2-d1K46NfoSA
【タイムスケジュール】
12:00~オープニング(セミナーの趣旨説明、登壇者紹介(10分))
12:10~中山望さんと渡邉さやかさんとのクロストーク&質疑応答(45分)
12:55~クロージング(SSS個別相談案内(5分))
【ゲストプロフィール】
中山望(なかやまのぞみ)さん
株式会社 ホープ・ラボ 代表取締役
長野県千曲市出身。大学卒業後、NHK等でTVディレクターとして情報番組や報道に従事。現在は、動画制作・プロモーションを手掛けると同時に、スマホを使用した撮影・編集技術、SNS×動画販促のセミナー講師として年間2,000人以上に指導を提供。
小6・小4・小1の3児の母として、現在小学校のPTA会長を務める他、経済産業省よろず支援拠点コーディネーター等も務める。2024年3月、長野県立大学大学院SI研究科 修了。日本政策金融公庫、日経Xウーマンなどで連載中。文京学院大学非常勤講師「メディアコンテンツ論」担当。
【こんな方におすすめ】
✔️起業や事業を考えている女性
起業や創業に興味はあるが、ハードルを感じている女性や、事業アイディアをブラッシュアップしたいと考えている女性
✔️仕事と家庭・子育ての両立に悩む女性
仕事と家庭、または子育てのバランスについて悩み、今後の働き方やキャリアについて考えている女性
✔️自己表現や発信力を高めたい女性
自分のやりたいことや思いを効果的に伝える方法を学びたい女性、特にSNSや動画を活用して情報発信を行いたいと考えている女性
詳細情報
https://www.facebook.com/events/809381708053044/?ti=ls
長野県 事業継承 マッチングフォーラム
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【概要】
「地域で事業を始めたい」「⼀⽣懸命育てた事業を誰かに継いでもらいたい」という2つの想いをつなげるイベントを開催いたします!
地域に愛され熱意をもって事業に取り組みながらも、承継に困っている事業者をお呼びして、ご⾃⾝の事業の魅⼒をお話いただきます。
また、事業承継⽀援の専⾨家から、オープンネームによるマッチングについて講演いただきます。
【登壇者】
第一部:講演
(株)ライトライト / 江尻 竜也 氏 (営業部副部⻑・宮崎オフィス⻑ )
(株)トランビ / 鈴木 涼子 氏 (Social Business Development 兼 Corporate Communication Director )
第二部:事業承継プレゼン
レストランマルシェ / 原 正利 氏 (佐久市・飲食店)
洋食飯屋 mamaya / 小林 光義 氏 (富士見町・飲食店)
フレッシュストアー レインボウ / 富井 一 氏 (野沢温泉村・スーパーマーケット)
【日程】
2025年1月27日(月)13:30 ~ 16:30
※ 15:40 ~ 16:30 は現地参加者向け交流会
【会場】
信州スタートアップステーション 松本
松本市大手3丁目3番9号 NTT東日本大名町ビル 1F ICT拠点施設(サザンガク内)
【ZOOM お申し込みリンク】
https://zoom.us/webinar/register/WN_rpAP0qw-Txmz1bWLwSFITg#/registration
(重要)おかげさまで、現地参加枠が満席となりましたので、以後のお申し込みはオンライン参加でお願いします。
自分のやりたいことを“伝える”力
県内全エリア

事業を起こす時、あるいは事業ではなくても自分のやりたいことを伝えて協力者を募ったり、想いを多くの人に知ってほしいとき、皆さんはどうしていますか?
今回は、動画を通じて「伝える」プロの中山望さんを講師にお迎えし、「人に伝えるとは?」というところから、多くの人に伝わる動画作成やSNSのコツをお聞きします。また、その背景にある中山さんがなぜ伝えることを仕事にしているのか、その先で見たい社会についてもお伺いできたらいいなと思っています。
現在埼玉県在住ですが、長野県のご出身。PTA会長、経営者、3児の母、大学講師…などさまざまな顔を持つ中山さんをお迎えしてのランチタイムの60分です!
【イベント詳細】
日時:2024年1月24日(木) 12時~13時
形式:オンライン(Zoomウェビナー)
参加費:無料
お申し込みはこちらからお願いします!
https://zoom.us/webinar/register/WN_85wzR_CtRL2-d1K46NfoSA
【タイムスケジュール】
12:00~オープニング(セミナーの趣旨説明、登壇者紹介(10分))
12:10~中山望さんと渡邉さやかさんとのクロストーク&質疑応答(45分)
12:55~クロージング(SSS個別相談案内(5分))
【ゲストプロフィール】
中山望(なかやまのぞみ)さん
株式会社 ホープ・ラボ 代表取締役
長野県千曲市出身。大学卒業後、NHK等でTVディレクターとして情報番組や報道に従事。現在は、動画制作・プロモーションを手掛けると同時に、スマホを使用した撮影・編集技術、SNS×動画販促のセミナー講師として年間2,000人以上に指導を提供。
小6・小4・小1の3児の母として、現在小学校のPTA会長を務める他、経済産業省よろず支援拠点コーディネーター等も務める。2024年3月、長野県立大学大学院SI研究科 修了。日本政策金融公庫、日経Xウーマンなどで連載中。文京学院大学非常勤講師「メディアコンテンツ論」担当。
【こんな方におすすめ】
✔️起業や事業を考えている女性
起業や創業に興味はあるが、ハードルを感じている女性や、事業アイディアをブラッシュアップしたいと考えている女性
✔️仕事と家庭・子育ての両立に悩む女性
仕事と家庭、または子育てのバランスについて悩み、今後の働き方やキャリアについて考えている女性
✔️自己表現や発信力を高めたい女性
自分のやりたいことや思いを効果的に伝える方法を学びたい女性、特にSNSや動画を活用して情報発信を行いたいと考えている女性
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自分のやりたいことを“伝える”力
一匹の犬との出会いが人生を変えた。犬とのよりよい暮らしを求めた移住が創業のきっかけに【後編】先輩起業家インタビューvol.11

起業する。会社を立ち上げる。「創業」と一口にいっても、そのあり方は人それぞれ。同じ選択や道筋は一つとしてありません。魅力的な先輩起業家が数多く活躍している長野県。SHINKIの先輩起業家インタビューでは、創業者の思いやビジョン、創業の体験談や、本音を掘り下げます。
「僕はこれまで、自分が好きなことだけをやって生きてきたタイプなので、パートナーである朋ちゃんにも、人生をかけてわくわくできることを見つけてほしいと常日頃思っていました。彼女がやりたいことを見つけて、長野で実現するチャンスを得られたことをとてもうれしく思っています。」
そう語るのは、愛犬と家族の絆を深めるための複合施設「JAZZY DOG(ジャジードッグ)」をオープンした小林朋紀(こばやしともき)さんのパートナーである小林雅也(こばやしまさや)さん。一緒に夢を叶えるため、2023年に家族で神奈川県横須賀市から長野県長和町に移住してきました。
インタビュー後編では、長野移住を決めた経緯や創業の道のり、実際にサービスを始めてからの手ごたえと今後の展望について聞きました。
<お話を聞いた人>
株式会社JAZZY DOG 代表・小林朋紀さん
猟犬の保護犬を家族に迎えた事をきっかけに犬ついて学び始める。「命を放棄しない、させない社会づくり」を目指して自宅で保護犬を預かり、新しい家族に繋げる活動をする上で、新しい家族のもとで人も犬もより幸せになるためには、自分自身がより知識を深め成長する必要を感じ「スタディ・ドッグ・スクール認定ドッグトレーナー」「米国CCPDT認定ドッグトレーナー(CPDT-KA)」を取得。犬達が生き生きと走り回ってる姿に魅了され、自分も自然に身を置きたいと考え2023年より長野県小県郡長和町に移住。犬たちの自由と福祉を第一に考え、学び続けながら犬たちとの信頼関係を深めている。
犬たちのため、家族の夢のために長野への移住を決意
――インタビュー前編では、神奈川からの移住を考え始めた経緯をお聞きしました。犬たちにとってよりよい環境を求めての決断とはいえ、家族で拠点を移すことには抵抗がなかったですか?

雅也さん:僕はこれまで音楽の仕事をメインに場所を選ばない働き方をしていたので、拠点を移すことは問題ありませんでした。それに、これまでは僕のやりたいことに朋ちゃんがついてきてくれていたので、今度は朋ちゃんがやりたいことを一緒にやっていこうと。
朋紀さん:長男はちょうど全寮制の学校に入ったタイミングでした。次男は転校が必要でしたが、彼自身も小さいころから犬が好きだったので、「犬のためなんでしょう」と納得してくれました。
――中でも長野を選んだのはどうしてだったのでしょうか。
朋紀さん:場所を探す上で、自然が豊かな広い土地があること、季節問わず十分に外で遊ばせられるように夏は涼しく冬は雪が少ないことが理想でした。長野は涼しいイメージがあったので、本格的に移住を考え始めた時点で自然と候補に挙がりましたね。長野と言っても広いので、積雪が少なく涼しい東信エリアに絞り込んで探していきました。
雅也さん:その中でたまたま今の土地を見つけて。長和町は山奥だけれど、国道が通っていて岡谷インターからも近い。旅先でドッグランに困った人も気軽に立ち寄れるだろうと思い、即決しました。そこから本格的にどうやって移住をするのか考え始めました。
――まずは理想的な土地を見つけたのですね。そこから移住や創業はどのように進んでいったのでしょうか。
雅也さん:まずは、内閣府の移住創業支援のホームページを見つけました。そこから長野県の担当窓口に問い合わせをしたところ、担当の方がとても親身に話を聞いてくださって。さらに、僕たちの目指す犬との暮らしのあり方は地域課題解決につながる可能性があるため、「ソーシャル・ビジネス創業支援金」の制度が使えるかもしれないと教えていただいたんです。
朋紀さん:そこで調べてみたところ、長野県でもやはりブリーダーの崩壊や多頭飼育崩壊は問題になっていることがわかってきて。そういった問題を地域で解決していくためには、人々の犬に対する意識を変えていくための啓蒙活動が必要です。その一環として、まずは誰でも気軽に利用できて、収益化もしやすいドッグランを作ることから始めようと構想が固まってきました。
それまでは、ただ「長野で犬と暮らしたい」という思いで動いていましたが、そこで初めて「自分たちが何をやりたいのか、何を目指しているのか」を人に伝えていかないといけないんだと一気に現実味が増してきました。そこから本格的に事業計画をまとめ、県にプレゼンテーションを行って無事に採択していただき、移住と創業のチャンスを得ることが出来ました。
タイムリミットがある中、急ピッチで移住と開業を実現
――採択後は、具体的にどのように移住や事業化を進めたのでしょうか

朋紀さん:創業・移住の支援を受ける条件として、期限内に住民票を移して事業をスタートさせる必要がありました。保護犬活動を行うためのNPO法人と、ドッグランやドッグホテルの運営・チャリティーグッズの販売等で収益化を目指す株式会社をそれぞれ立ち上げ、とにかく急ピッチでドッグランの工事に取り掛かりました。
雅也さん:自分たちの住まいに関しては、大型犬の多頭飼育をしていたため賃貸は厳しいぞと。かといって、自分たちで土地を買って家を建てる時間もなかったので、まずは空き家バンクを探して、たまたま山の中にぽつんとした一軒家を見つけたんです。オンボロだったけれど、直せばなんとか住めそうだったのでそこを買い取り、ドッグランの工事と並行して約一か月間神奈川から長野に通い、DIYで改修しました。
――時間的なリミットがある中での急発進だったのですね。

朋紀さん:はい。今思えば、一気に進めることが出来たのでリミットがあってよかったです。それから、「ソーシャル・ビジネス創業支援金」事業の一環である県からの伴走支援も心強かったです。
採択前の相談支援では、担当の方がいつも「私たちが何をしようとしているのか」を言語化するための質問を的確に投げてくれたので、思いだけで先走ることなく客観的な目を持ちながら、やるべきことややりたいことを整理していくことができました。採択後も、支援の一環として五年間の伴走支援を受けられるため、つい先日も建設中の施設を見学に来てくださいました。
――実際にドッグランの運用を始めてみて、利用しに来る方の反応や手応えはいかがですか?
朋紀さん:「こういうサービスがなくて本当に困っていた」と言っていただいたり、これまでのびのび外を走ったことがなかったワンちゃんが夢中で走り回ったりしているところを見るとやっぱりうれしいですね。
今はまだ施設の建設や犬のトレーニングに手いっぱいで、プロモーションやマーケティングまで手が回っていないのですが、社会に必要とされているサービスだという手ごたえがあるので、まずは口コミで利用者の輪が広がっていけばいいなと思っています。
――今後の展望や、挑戦したいことについて教えてください。

朋紀さん:まずは、現在建設中のドッグホテルとシェルターを完成させて、事業を軌道に乗せたいですね。日本は震災や台風などの自然災害が多い国です。でも、そういった際に大型犬を預けられる環境はまだまだ整っていない。災害に限らず、急な事故や病気で一時的に犬を預かってもらわないといけなくなるかもしれません。のびのびと遊ばせられる場所に加えて、なにかあった時に安心して預けられる場所を一つ持っておくことは、大事な犬やその後の犬との暮らしを守ることにつながります。
また、長野という土地を生かして、ジビエのお肉をドッグフードに活用し、さらに無添加の餌を食べた犬の糞を肥料にして野菜を育て、またドッグフードの素材にするなど、資源が循環する仕組みも模索していきたい。
やりたいことはまだまだたくさんあります。地域のいろんな企業とタッグを組みながら発信力や影響力をつけていき、最終的には、犬の正しい知識と飼い方、そして「命を捨ててはいけない」ということをしっかり社会に伝えていけるようにしたいです。
――最後に、これから長野で新しいことに挑戦しようとしている方に向けたメッセージをお願いします。

朋紀さん:なんの後ろ盾もない中での長野での創業でしたが、長野県の方々たちが私たちのやりたいことを「面白そう、いいね」と受け入れてくださり、創業支援をしていただけたことがうれしかったです。だからこそ、自分たちの描くイメージをしっかり実現して、応援してくださった長野県の方に「JAZZY DOGに長野に来てもらってよかったな」「あの人たちの活動がきっかけで、長野県の動物福祉が前進した」と思ってもらえるところまで目指していきたいと思っています。
雅也さん:僕はこれまで、本当に自分が好きなことだけをやって生きてきたタイプなので、パートナーである朋ちゃんにも、人生をかけてわくわくできることを見つけてほしいと常日頃思っていました。彼女が自分の内側から湧いてくる「やりたいこと」を見つけて、長野で実現するチャンスを得られたことをとてもうれしく思っています。僕のように「パートナーのやりたいことを実現するために移住を決める」というパターンも幸せなんじゃないか、ということを世のご夫婦に伝えたいです。
株式会社JAZZY DOGのホームページ
特定非営利活動法人JAZZY DOG LIFEのホームページ
一匹の犬との出会いが人生を変えた。犬とのよりよい暮らしを求めた移住が創業のきっかけに【前編】先輩起業家インタビューvol.11

起業する。会社を立ち上げる。「創業」と一口にいっても、そのあり方は人それぞれ。同じ選択や道筋は一つとしてありません。魅力的な先輩起業家が数多く活躍している長野県。SHINKIの先輩起業家インタビューでは、創業者の思いやビジョン、創業の体験談や、本音を掘り下げます。
「正直、まさか自分が起業するなんて思っていませんでした。すべてのきっかけは、一匹の犬に出会ったことなんです。」
そう語るのは、神奈川県横須賀市から長和町に移住し、ドッグパーク「JAZZY DOG(ジャジードッグ)」をオープンした小林朋紀(こばやし・ともき)さん。朋紀さんは、元猟犬の保護犬を引き取ったことから、ドッグトレーナーの勉強を始め、犬の保護活動に取り組むようになりました。活動を通し、安心して犬を預けられる施設の必要性を感じたことをきっかけに、愛犬との絆が深まる複合施設の立ち上げを目指すようになります。
インタビュー前編では、朋紀さんの挑戦を応援する夫の雅也さんと一緒に、事業の概要、保護犬との出会いから生まれた夢、長野移住を決めた背景について聞きました。
<お話を聞いた人>
株式会社JAZZY DOG 代表・小林朋紀さん
猟犬の保護犬を家族に迎えた事をきっかけに犬ついて学び始める。「命を放棄しない、させない社会づくり」を目指して自宅で保護犬を預かり、新しい家族に繋げる活動をする上で、新しい家族のもとで人も犬もより幸せになるためには、自分自身がより知識を深め成長する必要を感じ「スタディ・ドッグ・スクール認定ドッグトレーナー」「米国CCPDT認定ドッグトレーナー(CPDT-KA)」を取得。犬達が生き生きと走り回ってる姿に魅了され、自分も自然に身を置きたいと考え2023年より長野県小県郡長和町に移住。犬たちの自由と福祉を第一に考え、学び続けながら犬たちとの信頼関係を深めている。
大型犬対応!大自然の中で安心してのびのび遊べるドッグラン

――まずはじめに、株式会社JAZZY DOGの事業について教えてください。
朋紀さん:私たちは、長野県長和町を拠点に、「愛犬との絆が深まる」ことをコンセプトとした愛犬と家族のための複合施設「JAZZY DOG」を運営しています。
第一歩として、2023年に小型犬から大型犬まで受け入れ可能なドッグランをオープンしました。2025年の春には、ペットホテルや保護犬のシェルターもオープンする予定です。ゆくゆくはドッグフードや犬用玩具を扱う売店も設けていきたいと考えています。
――「JAZZY DOG」のドッグランにはどんな特徴がありますか?

雅也さん:「JAZZY DOG」のドッグランでは、約2000㎡の広大なフィールドを完全貸切でご利用いただけます。ドッグランは森の中にあるため、鳴き声を気にすることなくのびのびと犬を遊ばせることができます。また、高さ2メートルの返しをつけた特別製のフェンスで周りを囲っているので、大型犬でも脱走の危険性なく安心してご利用いただけます。
また、予約・受付から全て完全無人でご案内しており、365日24時間、1時間単位からご利用いただけます。人見知りや怖がりな犬でも、思う存分家族だけの時間を楽しんでいただけるドッグランです。
――大型犬に対応しているドッグランというのは少ないのでしょうか。
朋紀さん:まだまだ少ないと思います。私たち自身、20キロほどの大型犬を二頭飼っているのですが、一般的なドッグランや「ワンちゃんOK」と書いたコテージ等の宿泊施設でも、柵が低めのところが多く、完全に野放しするのはどうしても心配になります。また、貸し切りでないタイプのドッグランの場合、小型犬の飼い主さんに怖がられてしまうことも多く、肩身の狭い思いをすることもありました。
――せっかくのおでかけや旅行でも、何かあったらどうしようと気が休まらないですね。
朋紀さん:犬種によっては、鳥や動物を見つけると走って追いかける習性を持っている犬もいます。そうでなくとも、思い切り走り回らせてストレスを発散させてあげることが必要です。飼い主さんとワンちゃんの絆を深めるという意味でも、ドッグランは有効だと考えています。
「JAZZY DOG」ではドッグトレーニングのサービスも行っています。犬と人間が一緒に楽しく暮らす上では、人間が「犬の習性」について理解すること、そして犬が「人間の社会」について理解することが大切です。「JAZZY DOG」では、そのどちらも大切にし、トレーニングを通じて、家族と愛犬それぞれが、お互いを尊重しあえるコミュニケーションづくりをサポートしています。対面のほか、出張・オンラインまずはカウンセリングを行い、お悩みや愛犬の性格に合わせたトレーニングのプランをつくっていきます。
保護犬譲渡会での運命の出会いが人生を変えた

――朋紀さんが「JAZZY DOG」のサービスを立ち上げた経緯を教えてください。
朋紀さん:正直、まさか自分が起業するなんて思っていませんでした。「犬が大好きで、いつか犬に関わる仕事がしたかった」というわけではないんですよ。すべてのきっかけは、今の愛犬に出会ったことなんです。
私たちはもともと神奈川で暮らしていました。10年ほど前にチワワを一匹飼っていたのですが、子供たちが幼い時に亡くなってしまって。それ以来犬は飼っていなかったんです。でも、子供たちが小学3年生と6年生になったときに、また「犬と暮らしたい」と言い出して。正直、当時の私は「やっと子育てが落ち着いてきて自分の時間が持てると思ったのに、犬の世話なんてとてもできない」と思ったんですよ。ちょうどその頃に、知人から保護犬の譲渡会のお誘いをいただいて。
――当時、保護犬についての知識はあったのですか?

朋紀さん:全くなかったです。とにかくいろんなワンちゃんたちがいるだろうから、行くだけ行ってみようと家族で足を運んだんです。そこで、猟犬種のワンちゃんたちと初めて出会って。「こんなにかっこいい子たちが、どうして捨てられてしまうんだろう?」と衝撃を受けました。
雅也さん:子供たちより、朋ちゃんがそこにいた犬に一目ぼれしてしまったんですよ。それでうちで引き取ろうということになって。ですがその子は、「イングリッシュポインター」という犬種で、大型犬な上にもともと猟犬として育てられていたので家庭犬にするのがとても難しい犬でした。そこで彼女が「かわいいだけじゃ無理だ」と早めに気づいて、ドッグトレーニングの勉強を始めたんです。
――実際に自分が保護犬を引き取ったことから、保護犬や犬のトレーニングに興味を持つようになったのですね。
朋紀さん:はじめは迎えた犬と自分たち家族のために勉強をし始めたんですが、30代後半になってから改めて何かを勉強するってとても面白くて。当時、私はパートタイムのお仕事をしていたのですが、あくまで家計のためでやりたい仕事というわけではありませんでしたし、趣味も特になかったんです。気が付いたら、本格的にドッグトレーナーの資格取得を目指すようになりました。
――犬のために始めた勉強が、自分のためにもなっていったと。
朋紀さん:そのうちに、「預かりボランティア」という保護活動があることを知ったんです。「預かりボランティア」というのは、保護犬を一時的に引き取ってお世話やトレーニングをし、新しい飼い主さんにつなげる中継地点の役割です。自分たちで犬を引き取ることにはどうしても限界がありますが、その形であればたくさんのワンちゃんを幸せにできるだろうと思い、個人で活動を始めました。
犬たちにとってよりよい環境を求めて長野へ移住

――最初は個人的に保護犬活動を行っていたのですね。そこから現在の事業の形につながっていったのはどうしてですか?
朋紀さん:トレーニングの勉強をするにつれて、犬の扱いがわかるようになり、もっとたくさんの犬を迎えることができそうだという実感があったんです。特に、噛み癖や吠え癖などの問題があってなかなか保護されない犬たちを積極的に救いたいという思いが強くなってきました。問題がある子や大型犬、猟犬ほど、発散のための運動が必要になるんです。ですが、当時私たちは神奈川の住宅街に住んでいたので、思い切り走らせてあげられる場所もなかったですし、鳴き声も気にしないといけませんでした。
大型犬、元実猟犬は運動量も必要で、犬によってはほかの犬と一緒にお散歩に行けないことも多く、順番に散歩をしていると20km以上歩く事もザラで、1日が散歩で終わってしまう。これでは、住宅街に住んでる意味はあんまりないなと思うようになって。
それならば、自分たちで自然の中の土地を買い、自分たちの専用ドッグランを作って生活したいと考えるようになりました。
インタビュー後編では、長野での創業の道のり、実際にサービスを始めてからの手ごたえと、今後の展望についてお聞きしました。
株式会社JAZZY DOGのホームページ
特定非営利活動法人JAZZY DOG LIFEのホームページ
テクノロジーで社会を変える!技術系スタートアップマッチングセミナー
県内全エリア

【概要】
信州大学が主幹機関を務め、特色ある研究成果・技術シーズに基づく地方型スタートアップ創出・成長加速のためのエコシステム「IJIE」の取組を紹介します
また、IJIEに採択されている技術シーズ及び信州大学発ベンチャー企業のピッチ及び交流会を通して、技術シーズと経営人材のマッチングを図ります
IJIEについてはこちらをご参照ください
https://ijie.jp/
【スケジュール】
12:00~12:05 講師ご紹介
12:05~12:20 IJIEの取組紹介
12:20~12:50 シーズ及び信州大学発ベンチャー企業の事業紹介ピッチ
12:50~13:00 Q&A
13:00~13:30 交流会(現地参加者のみ)
【講師 (氏名 / 会社名・役職)】
角田 哲啓 氏 / 学術研究・産学官連携推進機構 特任教授
大塚 隼人 氏 / 信州大学 助教
渡部 広機 氏 / 信州大学 大学院 総合医理工学研究科4年
山邊 璃久 氏 / 株式会社Unseed 代表取締役CEO
藤森 研伍 氏 / 株式会社TRILL.代表取締役
【対象者】
技術シーズと連携したビジネスに関心のある起業家・経営人材、
金融機関や商工団体等の支援機関 (現地参加は20名限定)
【会場】
SSS長野拠点(シソーラス株式会社内) 〒380-0833長野県長野市鶴賀権堂町2312−1
【申込方法】
※現地参加・オンライン参加ともに、こちらのZOOM入力フォームからお申込みください
「成功事例から学ぶ!クラウドファンディング」~商品開発のストーリー~
県内全エリア

【概要】
県内の資金調達に関する支援施策をご紹介することで、起業家の事業アイディアに応じた適切な資金需要に対応することを目的としたイベントです!
【場所】オンライン(zoomウェビナー)
【当日のアーカイブ】
詳細リンク
【スケジュール】
12:00-12:05 講師ご紹介
12:05-12:35 CF事例のご紹介
12:35-12:50 対談:商品開発とCFの活用方法
12:50-13:00 Q&A
【講師 (氏名 / 会社名・役職)】
甘利なつみ 氏 / 長野県信用組合 ソリューションビジネス部 経営支援グループ
【対象者】
起業家、これから起業を考えている方、 人材確保に悩む経営者、創業支援機関 等
【申込方法】
こちらのページからお申し込みください。
ベンチャー企業に求められるファイナンス
県内全エリア

【概要】
信州スタートアップステーション(SSS)では、県内の資金調達に関する支援施策をご紹介することで、起業家の事業アイディアに応じた適切な資金需要に対応し、起業家・経営者の今後の成長を後押しするため、本ワークショップを企画させて頂きます。是非ともこの貴重な機会をご活用ください!!
【スケジュール】
18:00-18:05 登壇者紹介
18:05-18:35 資金調達手段のご紹介
18:35-20:00 事業ピッチ
20:00-20:30 交流会
【講師 (氏名 / 会社名・役職)】
石坂 颯都氏 / 信州SSファンドフューチャーベンチャーキャピタル(株)・東日本投資部次長
神尾 典裕氏 / 三菱UFJ信託銀行株式会社法人マーケット統括部・法人新規開発室上級調査役
上条 謙太氏 / 長野県信用組合 経営支援部・リーダー
【対象者】
今後資金調達を希望する県内の起業家、起業家予備軍、第二創業者、企業経営者等 10名限定
※参加ご希望の方は、当日までにピッチ資料をご準備ください。
【会場】
SSS長野拠点(シソーラス株式会社内) 〒380-0833長野県長野市鶴賀権堂町2312−1
【申込方法】
メール、電話、facebookメッセンジャーにて、【氏名、電話、メール】をご連絡ください。
【SSSW コラム】 ”想い”を事業にしていく力
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11月21日(木)のランチタイムに「想いを事業にする力」というテーマで、オンラインセミナーを開催しました。
ゲストは、登録者数10万人超のYouTubeチャンネルを運営し、株式会社ステアーズの代表取締役でありクリエイティブ・ディレクターの寺田真弓さん。「想い」をどのようにビジネスとして形にしていくかを寺田さん自身の経験をもとにお聞きしました。
寺田真弓さんは、長野県長野市のご出身で、2021年にUターンし、生まれつき障害のある夫と4歳の息子と暮らしています。2018年からYouTubeチャンネル「寺田家TV」を運営し、登録者数は10万人を超えたこともある寺田さん。また、YouTube運営の他に、障害や福祉を軸にSNSコンサル、動画制作、イベント運営などの事業を展開しており、最近では「みんきゅ〜プロジェクト」を立ち上げ、ユニバーサルツーリズムの普及に取り組んでいます。今回のオンラインセミナーでは、夫のユースケさんとの出会いや、47都道府県をヒッチハイクで回る企画、YouTubeチャンネルの運営、事業の立ち上げなどについて詳しくお話をお聞きすることができました。
特に、チーム作りや人を巻き込む方法について、ご自身の経験を基に具体的ですぐに実践できそうなお話しをして下さったのは、印象的でした。想いが強いほど「自分でやらなきゃ」「自分でやりたい」と思いがちですが、チームのメンバーに任せてみたり、「どうしたらいいかな?」と相談を投げかけることによって、自分ごと化してもらったりなど、実践的な内容をお聞きすることができました。寺田さんがご参加された「信州ベンチャーサミット※」についてもお話があり、そのときの様子を知る参加者からも「想いが伝わってきたピッチだった」とコメントがありました。
また、現在実施されているクラウドファンディングを通じて「みんきゅ〜プロジェクト」の資金調達を行っていることや、五カ国語で書かれた絵本「ほんとうにだいじょうぶ?」の制作秘話も伺いました。絵本もクラウドファンディングのリターンとしてご用意されていますので、ぜひウェブサイトをのぞいてみてください。
最後には、ご自身の経験を通じて、想いを事業にすることの重要性や、人生は一度きりであるからこそ大事にしたいというメッセージをいただきました。
信州スタートアップステーションウーマン(SOU)は、起業・創業にハードルを感じている方や、事業アイディアのブラッシュアップしたい方など起業に関する相談をはじめ、仕事と家庭・子育てとのバランスで今後の働き方に悩んでいる方など、幅広く女性を支援をしています。個別相談をご希望の方は、Facebook/Instagram、またはメール(info.ssswomen@gmail.com)までお問い合わせください。
次回は1月にオンラインでのトークイベントを予定しております。ぜひチェックしてみてください!
※信州ベンチャーサミット:信州スタートアップステーションが開催するベンチャー企業を対象としたピッチイベント。
詳細はこちら
職業、遊び人。どこにでも行ける旅人が、なぜ長野をベースに選んだのか【後編】先輩起業家インタビューvol.10

起業する。会社を立ち上げる。「創業」と一口にいっても、そのあり方は人それぞれ。同じ選択や道筋は一つとしてありません。魅力的な先輩起業家が数多く活躍している長野県。SHINKIの先輩起業家インタビューでは、創業者の思いやビジョン、創業の体験談や、本音を掘り下げます。
「遊んで暮らそうといざ無職になってみたら、無職って思ったより暇だったんだよね。当時俺は38歳で、周りに同じペースで遊べる同年代もいなかった。じゃあ仕事した方が楽しいかもしれないなと、次は何がしたいかなと考えて、ゲストハウスを作ることに」
そう語るのは、長野市善光寺表参道沿いにあるカフェ、バー、レストランを併設したゲストハウス「WORLDTRECK DINER & GUESTHOUSE – Pise」、異世界サウナ「SAMBO SAUN」を経営する辻和之(つじかずゆき)さん、通称サンボさん。
インタビュー後編では、オープン10年でゲストハウスへ業態を変えた理由や、長野を拠点としている理由、現在の働き方・暮らし方について聞きました。
<お話を聞いた人>
合同会社GIANT KILLING 代表辻和之さん
1976年生まれ、大阪出身。18歳からフリースキーを始め、夏は大阪、冬は長野の雪山に篭る2拠点生活を約10年間行う。2005年に長野市に移住し、タイ料理とアジアン雑貨の店「Asian Night Market」をオープン。2015年にはカフェバーを併設した「WORLDTRECK DINER & GUESTHOUSE – Pise」としてリニューアルオープン。2023年には店内の一部を改装し、異世界サウナ「SAMBO SAUN」をはじめる。
オープンから10年の節目で無職になるも、「仕事をした方が楽しい」と気がついた

――インタビュー前編では、長野でタイ料理とアジアン雑貨のお店「Asian Night Market」を始めるまでのお話を聞きました。現在はゲストハウスを運営されていますが、業態を変えたのはどうしてですか?
「Asian Night Market」は、オープン当時の俺が作りたいと思って作った店だったけど、オープンから時間が経てば立つほど自分の中では「かっこいい店」じゃなくなっていて。お客さんからはよく「内装がすごい」と言ってもらっていたんだけど、自分はそうは思えなくなってきた。それがずっとひっかかっていて。
――自分にとって「かっこいい」かが大事だと。
最初の店をDIYで作った関係で、東京のゲストハウス「Nui.」の内装工事を手伝いに行ったり、いろんな建物を見たりする中で、「Aian Night Marketはもう全然俺の中のベストじゃない」と思っていたんだよね。
ちょうどその頃にスタッフが途切れて、立ち上げ当初と違って資金も十分にあったから、しばらくは遊んで暮らして、お金がなくなったらまた新しいことでもしようかなと思って10年目のタイミングで一度店を閉めました。
――潔い決断ですね。
でも、いざ無職になってみたら無職って思ったよりも暇で。当時俺は38歳で、周りに同じペースで遊べる同年代もいなかった。「じゃあ仕事した方が楽しいかもしれないな」と思って、次に何がしたいか考えて、ゲストハウスを作ることにしました。
実は、もともと長野に来た頃からゲストハウスを作りたい気持ちはあったんだけど、当時長野市にはバックパッカーもほとんどいなかったし、ゲストハウスがメジャーな商売ではなくて。でも10年の間に長野にも観光客が増えたしゲストハウスも出来てきた。
でも、自分みたいなハードな旅人が泊まるような宿はなかったから、今度は長野にいながら旅気分でいられるような場所を作ろうと「WORLDTRECK DINER & GUESTHOUSE – Pise」(以下、Pise)をオープンしました。前やっていた店と同じようなことしようと思わなかったのは、世の中の流れが変わってきたことも大きいね。
野生の勘に従って業態を大きく転換。時代の流れに乗ることが出来た

――世の中の流れというのは?
「Asian Night Market」をオープンした頃は、まだ日本が豊かで、タイは物価が安かったんだよね。だから、タイで安く買ってきたものを日本で高く売ることが出来た。でも、10年の間にタイはめちゃくちゃ発展して、逆に日本は全然発展しなかった。毎年タイに行くたびに、成長や変化を見続けてきて、このまま同じビジネスモデルを続けるには厳しくなるだろうなという予感があった。
実際に、今はもうほとんど物価の差がないし、逆に日本が「物価が安い国」になって、バックパッカーも含めた海外からの観光客が一気に増えたよね。コロナ禍は想定外だったけど、最近はもうかなり海外からのお客さんが戻ってきた。海外からくる人にお金を落としてもらった方が、事業として先に続くんじゃ無いかって。
――お金の流れを転換したと。
そういうこと。仕入れ先も、相手するお客さんの客層も完全に変えました。「Pise」をオープンした頃は、完全に野生の勘で決めたことだったから裏付けはなにもなかったけど、あれから10年が経ってやっぱりそうなったなと思ってる。
――サウナの事業を始めたのはどうしてですか?

コロナの間、「Pise」にはバックパッカーより日本人のお客さんや長野県内のお客さんが増えて。そういう若い子たちによく『サウナ作ってください!』と言われてはいたんだけど、俺は自分が好きじゃないものは作れないから断ってた。
当時の俺にとってのサウナのイメージは「健康のためにみんな黙って熱さに耐える場所」で、何がいいのかわからなかった。でも、2022年の秋にアウトドアフェスの手伝いに行ったらサウナブースがあったから、試しに入ってみたんですよ、そうしたら、みんな飲みながら楽しく話をしていて、いい汗が出てきたら外に出て、夜風を浴びながら外気浴。これがすごく良くて。
サウナに入っただけで、一緒にいた人たちとすごく仲良くなれたんだよね。これは、コミュニケーションツールとしてすごくいいなってイメージが変わった。だから自分でも作ることにした。実際にフィンランドとエストニアも旅して、本場の文化を取り入れながら形にしたよ。
どこにでも行ける旅人が、なぜ長野をベースに選び続けるのか

――そういった背景があったのですね。それだけ旅好きで、フットワークも軽いサンボさんが、長野に拠点を持ち続けているのはどうしてですか?
正直、そもそも長野に移住したつもりはないんだよね。あくまで遊ぶためのベースをここにした、という話。俺は、住むところは世界中含めてどこでもいいんだけど、だいたいすぐに飽きちゃうんだよね。
コロナの間は、タイに一ヶ月滞在してゴルフ三昧な暮らし方をしてみたこともあるんだけど、いい生活ではあったけどルーティンになってくるとつまらなかった。とにかくベースはどこでもよくて、今は自分が好きだと思える自分の店が長野にあって、長野がいい感じだからここがベースになってる。
――「いい感じ」というのは?

俺は恐らく日本一ペースが早い大阪で生まれ育ったから、それに比べると長野はのんびりしてるんだよね。仮に大阪で、当時の遊びながら働く生活スタイルのまま「Asian Night Market」を始めていたらすぐに潰されちゃったと思う。でも長野なら、遊びながら稼ぐスタイルでも、周りの人の倍動けば余裕で生き残ることができた。つまり、そういう意味で楽ができる。
――その「楽さ」は、長野にきた20年前と今でも変わっていませんか?
商売のやり方を確立しているから、慣れという意味の楽さかもあるかもしれないね。今は、ペースを落として、24時間を24時間として動いても十分暮らしていけるから楽だね。もう、20代の頃みたいに人の二倍のスピードで動く歳ではなくなってきてる。記憶がなくなるくらい働き倒すみたいなことを、48歳になった今またできるとは思っていない。体力が落ちているのか落ちていないのかわからないけど、考え方も変わってきたし。
たとえば、コロナでお客さんが減ったタイミングで、宿泊のチェックインのシステムを完全に無人でも対応できるようにアップデートしたから楽になった。カフェバーも、メニューの量も減らして、自分一人でも回せるようになった。昔はとにかく稼がないとと思っていたけど、今は繁忙期と閑散期の波も分かってきたから、赤字もないし焦らずにやっていければと思えるようになったね。
――最後に、今後長野で新しいことや好きなことを始めてみようとしている人へのメッセージをお願いします。
会社にいればお金を貰える方が楽な人はサラリーマンをやればいいと思うし、自分のチョイスで好きな方向に舵取って進みたいなら独立したらいい。どっちが偉いとかじゃなくて、どっちが好きか。ガーっと稼いでガーっと休む働き方は、サラリーマンだとなかなかできないよね。全部自分でチョイスして、お金も時間の使い方も自分で即断即決できるのは強みだよ。
俺が20代の頃は、リモートワーク的にどこでも働ける感じじゃなかったけど、どこでも働ける人なら長野はかなりいいんじゃないかな。朝起きて雪山に滑りに行って、夕方から仕事ができる。そういう風に働いていてもやっていけるよ。

WORLDTRECK DINER & GUESTHOUSE – Piseのホームページ
SAMBO SAUNのホームページ