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起業家を長野県で育てていく。起業文化醸成のための工夫
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起業家を長野県で育てていく。起業文化醸成のための工夫

長野県から世界を目指す起業家・経営者を全力で支援する、創業支援拠点運営事業信州スタートアップステーション(SSS)。

前回の記事では、長野県産業労働部経営・創業支援課の関遼樹さんに、長野県が目指すスタートアップ支援の形について、お話を伺いました。

今回は、長野という土地で起業家の芽を増やし、育てていくための構想や、取り組みについて、お話を伺いました。

<お話を聞いた人>
関遼樹(せき はるき)さん

長野県産業労働部 関遼樹(せき はるき)さん

長野県産業労働部 経営・創業支援課主任。長野県職員、デロイトトーマツベンチャーサポートへの出向を経て、2023年に長野県庁へ復帰。アクセラレーションプログラム、スタートアップ拠点構築事業に従事し、地域イノベーターとして、地域課題解決とビジネスの両立を目指す。

地元中小企業とスタートアップのマッチングで生まれる、新たな潮流

実は私は三年前、スタートアップ支援をする東京の会社に出向していました。そこで運営していたモーニングピッチというイベントがありまして、毎週木曜日の朝7時から、毎週5社のスタートアップが、大企業の社員や役員に向けてピッチをするんです。

――朝七時に人が集まるのですか?

それが集まってくるんです。「始業前のアツい人たちが来る」というコンセプトでしたね。

参加企業と、ピッチをしたスタートアップ企業間につながりが生まれるよう、イベント開催後のフォローアップもしっかり行っていました。こういった活動を行うことで「投資につながった」「協業関係になった」などの結果も出ていました。一種のコミュニティ形成ですね。

この時の経験から、「スタートアップだけにアプローチをしていては、足りない。」という気づきがあり、地元の中小企業と、スタートアップのつながりが生まれるような仕組みを、長野でも作っていこうと考えました。

――長野でこういった活動を広げていく上での工夫はありますか?

まずは、長野の企業に向けて、リーディングカンパニーの事例を見てもらうようにしています。長野の有名企業がスタートアップと連携して、こんな成果が出ています、という事例をイベントで講演してもらうことで、「こんなことをやっているんだ」と、まずは興味を持ってもらう。そして「それならうちでも、できるかもしれない」と自分ごとに置き換えてもらう工夫を行っています。皆さんが知っている企業の実例、となれば、やはり皆さんに響きますね。

その次の段階として、長野県ならではの産業、例えば食品に特化した企業間でマッチングを行うことで、成立の確度を上げていきます。スタートアップが「点」だとすれば、大企業は大きな「面」で、この「点」と「面」をうまくクロスさせていきたいですね。

スタートアップ育成の観点でいくと、実は県外との協業も進めています。昨年度は大阪でイベントを開催したり、本社が長野ではないけれど、拠点が長野にある企業とも話をしたり、様々な角度から、取り組みを行っています。

起業文化を醸成していく上での、2つの課題

――こういった取り組みの中で、課題に感じていることはありますか?

大きくは二つあります。一つ目は、まだまだ起業が当たり前じゃない、という空気感です。

スタートアップへの資金調達環境も十分とは言えません。堅い言葉で言えば、スタートアップエコシステムの拡充・定着を進めていかないといけません。

――起業して終わりではなく、そこからずっと続いてくのが経営なので、維持していく難しさはありますね。

もう一つの課題としては人材育成の難しさです。

一般的なこどもの教育過程の中で、「自分で課題設定をして何かをやる」機会って、実はあまり無いと思っています。教科書には既に質問が書かれていますよね。

しかし、ビジネスでは自分で課題設定をしないといけません。自分で創造するために必要な考え方を、高校・大学に至る過程で身に着ける機会があれば、起業人口の裾野はもっと広がっていくのではと考えています。

――確かに、教科書に書かれたことをただ学習するカリキュラムでは、そこを身に着けるのは難しいと感じています

「課題の設定」と「じゃあそれをどうするか」という思考がセットにならないのが悩ましいところで、我々は、先輩起業家の講演などのセミナーを通して、皆さんが学べる機会を提供するようにしています。知識をまずはインプットして、それをどう応用していくか、という考え方が大切ですね。

セミナーも、多くの方を集めてやる内容もあれば、「資金調達」や「資材の調達」など少人数でしっかり戦略的にやるものもあります。繰り返し見ていただけるように、youtubeで視聴できるようにもしていますよ。

起業をもっと当たり前のものにしていくために、様々なセミナーをこれからも企画していきます。

女性起業家支援の取り組み

女性は、子育てなどで一度ビジネスシーンから離れると、これまで通りの仕事に戻ることに、困難を感じられることも多いかと思います。

起業やご自身の活動に関する悩みを相談したい女性に向けての、女性相談員の窓口も設けています。

SOU

特徴的なのは、1:1の相談だけではなく、様々な女性相談員に、横の関係で話を聞けることです。起業は法人化が前提では、決してありません。自分の想いを形にするために、少しだけやってみる、その挑戦を後押しできたらと考えています。女性の利用者も年々増えていますよ。

今年は女性起業家向けの連続講座も企画中なので、楽しみに待っていていただけたらと思います。