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2026.6.15

あなたの「気になる」を一緒に育てる場所、信州スタートアップステーション【コーディネーター紹介】

2026.6.15

長野県を「日本一創業しやすい県にする」ことを目指し創設された創業支援拠点「信州スタートアップステーション」(SSS)。長野県内での創業を考えている人であれば、誰でも無料で利用することができます。

今年度、SSSに新しいコーディネーターが加わりました。新卒でコンサルティング業界に飛び込み、社会人ビジネススクール、スタートアップというキャリアを経て、結婚を機に長野へ移住した島田みのり(しまだ・みのり)さんです。

「ふらっとカフェに行くような感覚で気軽に話に来てほしい」と語る島田さんに、これまでのキャリアやSSSへの思い、外から来たからこそ感じる長野のポテンシャルを聞きました。

<お話を聞いた人> 信州スタートアップステーション 島田みのり(しまだ・みのり)さん
コンサルティングファームにて電力業界に対するDX推進・システム開発案件に従事し、その後ヘルスケア領域のスタートアップにて経営企画・経理/会計/財務を経験。 信州スタートアップステーションには今年度より参画。

HOW?からWHY?へ。当事者に寄り添った支援をするために積んできたキャリア

――現在のSSSでの役割を教えてください。

SSSメンバーと手分けをしながら「信州スタートアップステーション nagano」に常駐して、創業の相談に来られた方や、すでに創業されていてこれからの方向性を考えている方のお話を伺い、必要な支援先におつなぎしたり、創業支援制度をご紹介したり、壁打ちのお付き合いをしたりすることがメインのお仕事です。

加えて、SSSのアクセラレーションプログラムや、各種セミナーの企画・運営も担当しています。アクセラレーションプログラムでは、メンターとして採択された方への伴走支援にも携わっています。

――これまでのキャリアを教えてください。

私は神奈川県出身で、新卒で東京のコンサルティング会社に入りました。コンサルティング業界を選んだ理由は、就活中にいろいろな業界を見る中で「やってみなければわからないことが多すぎる」と感じたからです。まずはいろんなことができる会社に入って、仕事をしながら自分の専門性を見つけていきたいと思い、コンサルティング業界を志望しました。

入社当時はDXやシステム刷新の案件が多く、3年ほど働く中で、次第に「なんでこのクライアントはこういうDXをやりたいんだろう」「これは何の役に立っているんだろう」と、物事の源流をたどっていくことに興味を抱くようになりました。「AIを入れようとしているけど、その結果会社として何がプラスになるんだっけ?」という問いが頭から離れなくなって。要は、HowからWhyに興味が移っていったんです。

そういうことを考えるにあたって、自分がビジネスをあまりにも知らなすぎると気づきました。売上と利益の違いもわからないような状態でしたし、リテラシーが低すぎてお客様と同じ目線で話せるわけもないと。だったら集中して一気に勉強した方が効率がいいと思い、26歳で一度会社を辞め、2年間ビジネススクールに通いました。2年間キャリアがストップしてもまだ28歳、そこからまた歩めばいいと。自分の中長期的な未来への投資という感じで、思い切りましたね。

――ビジネススクール卒業後は、またコンサルに戻られたんですね。

はい。いろいろな視点で物事を考えられるようになったので、それをコンサルタントの仕事に活かせると思って戻りました。

ただ、一度壁にぶつかってしまって。というのも、ビジネススクールに通ったことでどこか頭でっかちになっていた部分があって。論点を整理したり、きれいにまとめたパワーポイントを持っていくような仕事をしていたんですが、あるとき、「私は全然現場の実態がわかっていない」と痛感する状況に直面したんです。「これでは同じ目線で話ができない」と感じ、当時の上司の紹介で、スタートアップの現場に飛び込みました。

そこはヘルスケア領域のスタートアップだったのですが、創業から7年ほど経ち、当時社員が30人弱という、カオスすぎず、でもややカオスな規模感のところでした。自分たちがやらなければ誰もやってくれない環境で、自ら手を動かしながらも、自分の視野で会社のすべてが見渡せる。そんな経験を積んだタイミングで、2026年の春に結婚を機に長野に移住してきました。「自分にできる仕事はないか」と探していたところ、縁あってSSSに加わった、という経緯です。

スタートアップの当事者側を経験した上で、今度は支援する側にも関われているので、両方の視点を活かして支援を行っていきたいと思っています。

長野に来て感じた、事業の「種」のポテンシャル

――4月の着任から2ヶ月は、どんな動き方をしていましたか?

4月末に「SOBA Tech※」という長野県のスタートアップイベントがあり、まずはその準備に携わらせていただきました。長野県のスタートアップという文脈に、どういう人たちが関わっているのかをマクロから知ることができたと思います。イベントから学んだことをキャッチアップしながら、今後はここで地に足を着けて、いよいよ皆さんの相談に乗っていく形になるので、まだまだこれからですね。

――これまでコンサルティング業界に関わってきた島田さんから見て、「長野で創業する」ということにどんな可能性を感じていますか?

都市部のスタートアップと比べて、「長野ならでは」の要素が多いんだなということを、改めて感じました。「SOBA Tech」で実際に長野の資源を生かして起業された方のお話を聞いたり、VCの方と話したりすると、皆さん口をそろえて「長野ならでは」とおっしゃるんです。

たとえば山が多いなど地形だけを見てもすごく特徴がありますし、東京のような人のネットワークや情報の集積とは違う、物理的な自然の資源や文化・伝統は、それ自体が差別化のポイントになる。さらにはそういった強みが複数あるのはすごいことだと思います。「いろんな創業の種がありそうだな」という手応えがあります。私自身も、長野で創業を考えている方と一緒に、この土地の可能性を探っていけたらと思っています。

※SOBA Tech(Start up Opportunity Building Alliance for TECH Nagano):長野のウェルビーイングな環境でスタートアップと多様なステークホルダーが出会い、新たな連携を生む機会を創り出す、長野県主催のスタートアップイベント。2026年4月24〜25日に開催。

「ちょっと気になる」から始めていい。そのための場所でいたい

来訪者と談笑する島田さん

――これから支援する側として、どんな姿勢で相談者と接していきたいですか?

自分自身が一社員としてスタートアップの現場にいて感じたことは、創業する人というのはやりたいことにかける思いや熱量がすごく強いということです。そういう熱量を自分の中に持ちながらも、まだ動けていない方がきっとたくさんいるんだろうなと。「くだらないって言われそう」とか、「何をやったらいいかわからない」とか、「責任が怖い」とか。でも、そういう思いがあること自体がすごいことなので、背中を押す存在になりたいと思っています。

最初の一歩は、大げさじゃなくていい。ちょっと考えてみるとか、誰かにアイデアを話してみて、その時にワクワクするかどうか確かめてみるとか。素朴な気づきや疑問、「これってなんでこうなっているんだろう?」という問いを持って、ちょっと形にしてみようとするだけでも、創業への立派な一歩だと思っています。創業って普通のことなんだ、特別に頭がいい人や行動力がある人だけのことじゃないんだ、という感覚を持ってもらえたら。そのためのセミナーなどの企画にも積極的に取り組んでいきたいです。

――最後に、この記事を読んでいる方へのメッセージを。

「信州スタートアップステーション nagano」は、ちょっとおしゃれなカフェのような雰囲気なので、カフェでコーヒーを飲むくらいのテンションで気軽に来てもらえたらうれしいです。

SSSのサイトにシフト表を載せているので、そこで営業日と担当者を確認できます。「この人に相談したい」という希望があれば、その人がいる日を選んでいただけます。Facebookページでもシフトやセミナーなどの情報を発信していますので、気になる方はぜひチェックしてみてください。メールかお電話でご連絡いただければ、予約も受け付けています。

「ここを相談したい」といった具体的な相談内容が整っていなくても、「頭に思い浮かんだことがある」「なんとなく気づいたことがある」だけで十分で、その後は一緒に話しながらやりたいことを見つけていくことができます。相談は無料ですし、ふらっと立ち寄る感じで来てもらえれば。私はおしゃべりが好きなので、ぜひおしゃべりしに来てくださいね。

それに、創業というのは1人でやりきる必要は全くなくて。必要な時に、必要な人に助けてもらえばいいんです。その点でもSSSとしてサポートできますし、必要な人につなぐこともできます。必要以上に怖がらずに、まずは一度話に来てもらえたらと思っています。

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2026.5.26

長野だからできるアート体験を、地域と共に。「SAKE ART」が描く新しい観光コンテンツの形【後編】先輩起業家インタビュー

2026.5.26

起業する。会社を立ち上げる。「創業」と一口にいっても、そのあり方は人それぞれ。同じ選択や道筋は一つとしてありません。魅力的な先輩起業家が数多く活躍している長野県。SHINKIの先輩起業家インタビューでは、創業者の思いやビジョン、創業の体験談や本音を掘り下げます。

「まずは小さく始めてみることをおすすめします。移住だって引っ越しの延長線上。事業も最初から大きく構える必要はなくて、少ないお金からできることがたくさんある。池に石を投げたら波紋が広がるように、やってみることで自然と広がっていくイメージです」

そう語るのは、長野市を拠点にお酒を飲みながら絵を描くアート体験「SAKE ART」を展開する株式会社ARTLIER代表取締役の目黒健太郎(めぐろ けんたろう)さん。2024年6月のスタートから約1年半、長野市内での定期イベントにとどまらず、善光寺門前の酒蔵や小布施町の北斎館でのコラボイベントを実現。松本市や佐久市、塩尻市のゲストハウス、ブルワリーやワイナリーなど、活動の範囲は県内各地へと広がっています。

インタビュー後編では、長野の地域資源との掛け合わせが生み出す特別な体験の数々と、地域と共につくる新しい観光コンテンツの可能性について聞きました。

<お話を聞いた人> 株式会社ARTLIER 代表取締役 目黒健太郎(めぐろ けんたろう)さん

1988年、神奈川県生まれ。新卒で総合リース会社に入社し、11年間にわたり医療機関の開業支援や国内外のスタートアップ投資に従事。その後、専門人材データベース企業に転職し、フルリモート体制で全国の自治体と連携した地域企業への人材マッチング事業を推進。

2022年4月、「NAGA KNOCK!」への参加を機に長野市へ夫婦で移住。移住直後より長野市の起業コミュニティの立ち上げ・企画運営に携わり、現在も地域の挑戦者を支える場づくりを継続中。

2024年6月には、自身の「やってみたい」を形にした、お酒を飲みながら名画が描けるアートスタジオ「SAKE ART」を開始。2025年12月に法人を設立。お酒とアートを通じて、誰もが素顔に戻れる「大人の遊び場」を創出。お酒とアートを通じて、誰もが素顔に戻れる「大人の遊び場」を創出。酒蔵やブルワリー、ワイナリーなど地域の作り手との連携を通じて、長野ならではの新しい観光コンテンツの開発にも取り組んでいる。

SAKE ART 公式サイト:https://sakeartlab.com/

アクセラレーションプログラムから生まれた、長野ならではな地域事業者との共創の場

――インタビュー前編では、「SAKE ART」を小さく始めた経緯を伺いました。実際に始めてみてから見えてきたことはありますか?

実際に始めてから見えてきたことは本当にたくさんあります。たとえば、最初は自分たちが絵を教えることに不安があったことから、インストラクターは外部のプロの方にお願いしていたんですが、次第に事業の核の部分をずっと外部依存していていいのかという疑問が出てきて。

僕たちの目指すゴールは「うまく描く」じゃなくて「楽しく描いて達成感を感じていただく」ことなので、スペシャリストよりも、描けない人の気持ちがわかる人の方がむしろ適しているんです。自分たちなりに試行錯誤をし、回数を重ねるうちに自分たちでインストラクターができるようになりました。そうして少しずつ軌道修正を重ねて、今の「SAKE ART」のスタイルが確立していきました。

――2025年度に、信州スタートアップステーションの「信州アクセラレーションプログラム」※1 へ参加したことが、県内での活動の広がりにつながったそうですね。参加を決めた理由は?

1年間やってきて、ある程度型が決まってきて新規のお客さんも来てくださるようになってきたので、改めて外部のプロ目線を入れて、どうSAKE ARTを伸ばしていくかを本格的に考えたかったというのが主な理由です。

――実際にはどんな支援を受けましたか?

支援の内容は大きく三つあって、一つ目がブランドイメージの言語化です。自分自身の「楽しい」という気持ちだけが先行していたところを、実際に来てくださったお客様の特徴や考え方をプロの方と一緒に整理して、どんな方に刺さっているのかを言語化しました。それによってロゴやブランドカラーも固めることができました。

二つ目が広告の効果検証です。マーケティングは専門外だったので、何をこの段階で検証すべきかをプロに明確にしてもらい、LINE広告やインフルエンサーとのタイアップを実施しました。地元テレビ「土曜はこれダネ!」にも取り上げていただいて、自分たちだけではできない認知拡大の効果を実感しましたね。

そして三つ目が、県内事業者様とのネットワークづくりです。立ち上げ初期は長野市内のレンタルスペースを中心にイベントを展開していましたが、この支援によって活動範囲を大きく広げることができました。

――どのように事業が広がったか教えてください。

善光寺門前町の酒蔵「善光寺外苑 西之門 よしのや」とのコラボイベントの様子

自分たちだけではアプローチできないような県内の各事業者の方々と意見交換させていただく機会をつくっていただき、結果として長野市・善光寺の門前にある酒蔵「善光寺外苑 西之門 よしのや」さんや、サンクゼールさんとのコラボイベントにつながりました。

ほかにも、松本市や塩尻市、佐久市などの近隣エリアでの初開催や、長野市のクラフトビール醸造所のNAGANO BREWERYさんとのコラボも実現しました。特別なイベントをきっかけに通常イベントへ誘導する動線もつくれるようになり、地域×観光×体験という「SAKE ART」がこれから目指していく事業の形が見えてきました。

当初の狙いだった「県内での本格的な認知拡大の検証」という意味では、非常に満足のいく結果になったと思っています。信州スタートアップステーションを始めとした関係者の皆様には大変感謝しております。

※1 信州アクセラレーションプログラム・・・信州スタートアップステーションによる、次世代産業と地域課題の解決を目指す企業の創出をはかるため、創業後間もない企業への短期集中的伴走支援(アクセラレーションプログラム)

新しいサービスが地域に受け入れられるまで

――小布施町の美術館「北斎館」でもイベントを開催されたと聞きました。

小布施町のイベントでは、地元のワイナリーで作られたワインやジュースを用意

きっかけは知人の紹介で、小布施町の観光全般を担当されている方が私たちのイベントに来てくださったことでした。

北斎館とも非常に強いつながりをお持ちの方で、その方を起点に北斎館の関係者の方々にも知っていただき、まずはチームビルディングとして体験していただいたんです。皆さんに非常に喜んでいただけて。普段は美術館で鑑賞するだけの北斎を、実際に見た上で自分で描く体験を通じて、より北斎を身近に感じてもらえるということで、共催イベントを実施する運びになりました。小布施町は葛飾北斎が晩年を過ごした土地で、北斎を支援したパトロンが当主をしていた酒蔵など、北斎ゆかりのお酒がたくさんあります。北斎館で作品を鑑賞してから、そのゆかりの日本酒や地元ワイナリーのワインを楽しみながら北斎を描く。そんな体験ができるのは全国探しても小布施町だけで、参加者の方に小布施のファンになっていただけるという狙いもありました。信濃毎日新聞にも記事にしていただき、参加者の半数以上が県外からお越しいただいたことも印象的でした。

――地方ではまだあまり知られていない新しいサービスを提供する上で、地域の受け入れ側の反応はいかがでしたか?

「お酒×アート」の体験は、日本ではまだ大都市圏にしかなく、実際に体験したことがある人は5%以下という状況です。最初に企画を持ち込んだ時は、はやはり「何それ?」という感じでしたね。そういった新しいアクティビティーを、美術館や酒蔵という歴史あるオフィシャルな場所でやることへの戸惑いは当然ありました。

でも、実際に体験してもらったり、参加者が笑顔で描いている写真や動画を見てもらったりするうちに、「面白そうだね。まずは1回やってみよう」という反応に変わっていきます。そして実際にやってみると「これは定期的にやっていきましょう」という話になっていくんです。最初の戸惑いから、段々積極的になってくださるプロセスが毎回印象的です。

長野は日本で一番美術館と博物館が多い地域なんですよ。そして、新潟県に次いで日本で2番目に酒蔵が多い地域でもあり、ワインの産地でもある。お酒とアートを掛け合わせた文化を長野から発信できるというのは、すごく説得力があると思っています。


長野を起点に、地域と共につくる新しい観光体験へ

――今後の展開についても聞かせてください。


直近では、長野市内のブルワリーや、ワイナリーとのコラボイベントを行いました。長野市外でも、塩尻や佐久平など新しい地域でのイベントも増えてきています。それぞれ長野市とはまた違う客層の方に来ていただき、地域ごとの個性があるなと感じました。

塩尻のイベントでは、地域のゲストハウスとコラボし、地元のお酒を飲みながら絵を描いてそこに泊まる、というコンセプトを提供することができました。地元の人にとっても、外から訪れる人にとっても、その土地への愛着を生むコンテンツになったと思っています。今後も県内各地でその土地ならではのコラボイベントを企画していきたいです。

固定スタジオを持たないからこそどこへでも行けるのが強みです。長野を飛び出して山梨や金沢、東北など、各地の酒蔵やワイナリー、そしてアートが好きな方々と連携しながら、その土地ならではのお酒とアートを掛け合わせた体験を広げていきたいと思っています。

企業向けの展開では、社内研修やエンゲージメント向上への活用も考えています。実際に、先日長野市内の企業さんと30人規模の社員向けイベントを開催したのですが、社員の方だけでなくご家族、小さなお子様も含めて皆さんで集まっていただいたんです。アートを通して会話が生まれると、上司・部下という縦の関係性ではなく、斜めの関係性で交流できる。福利厚生としてだけでなく、家族ぐるみで会社への愛着が深まるような場になったと感じています。

老若男女が一緒に楽しめて、会話と創作への没頭が両立できるのが「SAKE ART」の強みなので、エンゲージメント向上やカルチャーブランディング、新卒研修などへの活用余地も大きいと考えています。自治体でのマッチング・婚活イベントへの横展開も考えられますし、将来的にはフランチャイズ展開も視野に入れています。長野だからこそできることの可能性を広げながら、日本各地でさまざまなコンテンツを展開していけばと考えています。

――最後に、長野での起業を考えている人にメッセージをお願いします。

まずは小さく始めてみることをおすすめします。長野への移住だって引っ越しの延長線上でしたし、起業も「人生をかけるぞ!」と最初から大きく構える必要はなくて、出来る範囲の予算で実験レベルからでも始められます。

その実験を2〜3回やるだけで、考えているだけではわからないたくさんのことが見えてきます。始めることで人からの反応が生まれ、水面に波紋が広がるように自然と事業が広がっていきます。反応がなければやめればいいですし、撤退の選択肢を持ったまま、ちょっとだけ背伸びしたやり方でやってみる。目指すところまで道のりを一足飛びで行こうとするのではなく、グラデーションで歩んでいけば、精神的な負担も少なく、自分のペースで事業を進めていけると思います。

株式会社ARTLIERのホームページ

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2026.5.26

長野だからできるアート体験を、地域と共に。「SAKE ART」が描く新しい観光コンテンツの形【前編】先輩起業家インタビュー

2026.5.26

起業する。会社を立ち上げる。「創業」と一口にいっても、そのあり方は人それぞれ。同じ選択や道筋は一つとしてありません。魅力的な先輩起業家が数多く活躍している長野県。SHINKIの先輩起業家インタビューでは、創業者の思いやビジョン、創業の体験談や本音を掘り下げます。

「まずは小さく始めてみることをおすすめします。移住だって引っ越しの延長線上ですし、事業も最初から大きく構える必要はなくて、少ないお金からできることがたくさんあります。池に石を投げたら波紋が広がるように、やってみることで自然と広がっていくイメージです」

そう語るのは、長野市を拠点に、お酒を飲みながら絵を描くアート体験「SAKE ART」を展開する株式会社ARTLIER代表取締役の目黒健太郎(めぐろ けんたろう)さん。神奈川県出身の目黒さんは、都内の総合リース・金融機関に11年間勤務した後、フルリモートのベンチャーへ転職。長野市の起業支援プログラム「NAGA KNOCK!(ナガノック)」への参加を機に、2022年に夫婦で長野市へ移住しました。

前職のアメリカ駐在中に出会った「ペイント&シップ」を日本の地方から広めたいという思いを胸に、2024年6月にSAKE ARTをスタート。以来1年半で延べ500人を超える参加者を集め、2025年12月に法人を設立しました。

インタビュー前編では、SAKE ARTという事業の魅力と、目黒さんが長野で創業を決意するまでの道のりを聞きました。

<お話を聞いた人> 株式会社ARTLIER 代表取締役 目黒健太郎(めぐろ けんたろう)さん

1988年、神奈川県生まれ。新卒で総合リース会社に入社し、11年間にわたり医療機関の開業支援や国内外のスタートアップ投資に従事。その後、専門人材データベース企業に転職し、フルリモート体制で全国の自治体と連携した地域企業への人材マッチング事業を推進。

2022年4月、「NAGA KNOCK!」への参加を機に長野市へ夫婦で移住。移住直後より長野市の起業コミュニティの立ち上げ・企画運営に携わり、現在も地域の挑戦者を支える場づくりを継続中。

2024年6月には、自身の「やってみたい」を形にした、お酒を飲みながら名画が描けるアートスタジオ「SAKE ART」を開始。2025年12月に法人を設立。お酒とアートを通じて、誰もが素顔に戻れる「大人の遊び場」を創出。酒蔵やブルワリー、ワイナリーなど地域の作り手との連携を通じて、長野ならではの新しい観光コンテンツの開発にも取り組んでいる。

SAKE ART 公式サイト:https://sakeartlab.com/

お酒を片手に、誰もが楽しめるアート体験「SAKE ART」

――まずは「SAKE ART」の事業内容を教えてください。

一言で言うと、お酒を飲みながら絵を描くアート体験を提供しています。元々は、アメリカ発祥の”ペイント&シップ”と呼ばれるアクティビティで、今やアメリカ全土で1,700施設以上が展開する大きなマーケットになっています。オーストラリアやイギリスなど世界中に広がっていて、若者を中心に人気のエンターテインメントです。

「SAKE ART」では、インストラクターがその場でみなさんと一緒に描きながら、描き方のポイントを教えていくので、初心者でも約2時間で作品が完成できます。お一人での参加はもちろん、友人やグループでわいわい楽しめる点が特徴で、技術の向上を目指す絵画教室ではなく、『自分にも描けた!』という自己肯定感を得られる交流の場を意識しています。

――どんな方が参加されていますか

友人同士やカップル、職場の仲間でいらっしゃる方が多いですね。2024年の立ち上げから、2026年の5月時点で参加者は延べ530人を超えました。

現在は月4回程度のペースで企画する定期イベントに加えて、企業の懇親会や福利厚生の一環としてプライベートイベントを行うこともあります。最近では長野県内の酒蔵様と連携し、酒蔵の中で日本酒を飲みながら北斎を描く会を実施しました。

また、長野市街地を一望できる農園をお持ちのブルーワリーさんや、ワイナリーさんでの屋外アートイベントなど、海外ではメジャーな「ペイント&シップ@ビンヤード」というワイナリーで行うイベントを国内でもいち早く取り入れて観光コンテンツとしてのアップデートを狙っております。こうした地域の特色を生かすため、近隣事業者の皆様との連携を通じたペイント&シップのイベントを実施しております。

――「SAKE ART」はリピーターの多さが特徴だと伺いましたが、参加者の方からの反応はいかがですか?

地域の方から「こんな新しい遊びを長野に持ってきてくれた」「ハマれる趣味ができた」と言っていただくのは本当にうれしいですね。Googleの口コミにも「安心して2時間過ごせた」「自分で描いたとは思えない出来栄えになった」という声が多くて。

参加者の方は、「絵を描く」と言うことに対して「自分なんかが描けるわけない」というマイナスからスタートする方がほとんどです。「SAKE ART」を通して、そのマイナスをゼロに、そしてプラスに変えられたという手応えを感じています。そのマイナスをプラスに変えられたとき、今まで蓋をしていた創作欲が開くんだと思います

実際に、「SAKE ART」に参加したことをきっかけに絵画教室へ通い始める方や、自分で画材を買い始める方もいるんですよ。SAKE ARTが入り口になって、その人の新しい挑戦や、アートの世界とのつながりが広がっていったらうれしいなと思っています。

大企業の会社員から、フルリモートのベンチャーへ

前職時代の目黒さん

――目黒さんは、関東でリース・金融機関に長く勤めていたそうですね。長野で「SAKE ART」を始めるまでにはどんな経緯が?

前職では、クリニックの開業支援やスタートアップ投資、半導体融資などを担当していました。アメリカ駐在も経験し、やりがいは感じていましたが、大きな組織ゆえに会社が向かう方向と自分のやりたいことが完全に重なるわけではない部分もあって。

また、コロナ禍の影響も大きかったです。コロナ禍でリモート出勤になったところから、ロックダウンが明けたらまた週5で出社になって。この行き来がすごくストレスでした。節々に感じるズレが積み重なって、「組織に依存しない仕事を持っていた方が自分らしく生きられるんじゃないか」と考えるようになりました。

それならば、自分が好きな場所で働ける仕事に移ろうと思い、まずはフルリモートのスタートアップに転職しました。通勤時間がなくなった分、いろんな試行錯誤ができるようになったんです。理想の働き方に近づいた最初のステップでしたね。

――働く場所を選ばないフルリモート勤務になったところから、長野に移住を決めたのはどんな理由が?

満員電車にもう乗りたくなくて(笑)。人口密度が低く、新幹線で都心まで1時間以内の場所を探していたら、たまたま長野県の「NAGA KNOCK!(ナガノック)」※1という副業プログラムを見つけたんです。本業を続けながら現地に通えて、住まいも見つかるかもしれないという点に魅力を感じて申し込みました。

そのプログラムで提案した、起業コミュニティをつくる事業が「NAGA KNOCK!」後も継続することになり、そのタイミングで移住を決めました。

――首都圏から移住するにあたって、心理的なハードルはありませんでしたか?

妻も個人事業主的な働き方をしていて、ネット環境があればどこでも働けたので、首都圏を離れたい気持ちは二人ともずっとありました。当時は埼玉と東京の境界あたりに住んでいて、人口が多い地域だったのでもう少しゆとりのある地域がいいねという話はずっとしていたんです。

もともと首都圏を離れたい欲求は強かったので、あとは移住先の地域に友達や知り合いがいればいいというのが一番大きなポイントでした。まずは私が「NAGA KNOCK!」をきっかけに長野に通うようになり、顔見知りや友人が増えてきたタイミングで妻を長野に呼んで一緒にみんなで食事をする機会を作りました。それによって、「誰も知り合いがいないわけじゃない」という安心感をつくってから移住を決めました。

※1 NAGA KNOCK!・・・長野市内の経営者と一緒に社会課題を解決する新規事業を起こす、9カ月間の実践型プログラム

「まずやってみよう」から生まれた、SAKE ARTの第一歩

――いきなり移住するのではなく、まず通って関係性をつくるステップを踏むというのは大切ですね。移住後は、どのような流れで「SAKE ART」の立ち上げに至ったのでしょうか。

アメリカ駐在時代、「いつもと違うことをしてみよう」と初めて”Paint & ship”のイベントに参加した目黒さん夫妻

ちょうど移住した頃、自分の中で「35歳までに何もしなかったら多分何もやらないな」という焦りがあって。フリーランスになって時間の余裕も出てきたことや、長野に移住して暮らしにゆとりができたことで、自分の事業とちゃんと向き合おうと思うようになりました。

では何をするかとなったときに、何より自分が「楽しい!」と思えるものをやった方が人に伝わるだろうと考え、アメリカ駐在中に夫婦で体験した“ペイント&シップ”のイベントを思い出したんです。初心者でも楽しくアートに触れられて、費用対効果も高く、自分たちも夢中になれた。そこで、まずは妻にアイデアを伝え、長野で知り合ったいろいろな方の力をお借りしながら小さなイベントから二人で初めてみました。

――最初のイベントはどんな規模で始めたのですか?

シェアスペースを借りて、お酒を準備し、画材は百均で調達しました。外部の方にインストラクターをお願いしても、10万円以下で始められました。

――夫婦での起業ということで、役割分担はどのようにされていますか?

インストラクターを務める妻の佳美さん

「二人で同じことをやらない」というのが唯一のルールです。私が対外交渉とSNS発信、妻がテーマ開発とインストラクターを担当しています。

事業が広がるにつれて、地域のアーティストの方がインストラクターとして加わってくださるようになり、妻の役割はインストラクター自身から、インストラクターを育てる側へと広がってきています。お互いの得意不得意を分かっているからこそ、ちゃんと線引きして独立して動いています。

インタビュー後編では、長野の酒蔵や美術館とのコラボレーションや、県内各地への展開、今後の構想について聞きました。

株式会社ARTLIERのホームページ

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2026.2.27

【SOUコラム】計画通りじゃなくていい、の人生。|後編

主催:SSSW
2026.2.27
イベント/セミナー/研修を探している

県内全エリア

前編では、妊娠・休学・復学・大学院という、予期していなかったけどなるようになってきたと思えるわたしの人生について書きました。後編では、その延長線上にあるsouという場所と、「支援」の意味について書きたいと思います。

souの現場で出会う女性たちは、実に多様です。すぐに起業する人もいれば、準備を重ねる人、あえて組織の中で経験を積む人もいる。今はまだその時期ではないと決めている人もいます。
そこに共通しているのは、”正解を急がない”という姿勢でした。

女性起業支援というと、事業計画や売上、資金調達の話に目が向きがちです。もちろんそれらは重要です。

でも現場にいると、本当に必要とされているのはもっと手前にあることだと感じます。「自分が何をしたいのか、まだよくわからない」「自信がない」「整ってから動こうと思っている」——そういう声をよく聞くからです。
でも、整ってから動ける人なんて、ほとんどいない。前編で書いたように、わたし自身がそうでした。

女性のキャリアは、出産や育児によって分断されると言われがちです。でも、本当に分断なのでしょうか。
ライフイベントは、視点や優先順位を変える契機であって、価値を減らすものではないはずです。むしろ、問いを深くし、事業の根を強くする時間になり得ます。
「全部整ってから」を待つのではなく、「今の自分が置かれた状況の中でベストだと思える選択をする」。その選択に、自分らしさが紐づいていたら、自分だけのキャリアができていくのだと思います。

実は、わたしは就職することにしました。半年前には、まったく予期していなかったことです。そして、来年まだ組織にいるのかも、正直まったく想像がつきません(笑)
起業支援の現場にいながら、組織で働く。わたしのなかで大事にしていることは変わらず、「自分らしく生きる」ことを大事にしたい。そして、そこにかかわる仕事をする。立場が変わっても、やりたいことは変わりません。
キャリアは一直線ではなく、あとから意味がつながるもの。直感を信じられた選択なら、失敗なんてないと思います。

女性起業支援とは、起業させることではなく、「自分の人生を自分で設計していい」と伝え続けることなのだと、わたしはsouで学びました。その土壌を育てることが、souの本質だと思っています。
計画通りじゃなくていい。
今の自分の「これだ」という感覚に向き合えるよう、これからもsouは続きます。

sou事務局
勝山由莉愛(かつやまゆりあ)
長野県立大学1期生。在学中に出産し、7歳の娘の母。
家族とねこたちと、小諸市で循環型のくらしを実践中。自身の経験から、「こどもがしあわせに生きれる社会」を目指して、みんなが「自分らしく生きる」ためにさまざまな分野からアプローチし続けます。これからも、好きな自分でいれる生き方がしたい。

ARTICLE
2026.2.27

【SOUコラム】計画通りじゃなくていい、の人生。|前編

主催:SSSW
2026.2.27
イベント/セミナー/研修を探している

県内全エリア

大学入試の1ヶ月前、体調に変化がありました。
高校卒業後に入った大学をやめ、もう一度やり直す。人生で初めて、自分で決めたチャレンジ。その試験日が近づくにつれて、体調は悪くなっていきました。調べれば調べるほど、妊娠超初期の症状と一致する。でも、試験が終わるまでは現実から目を逸らしたくて、受験の翌日に産婦人科へ行きました。

「妊娠しています。どうするかはさておき、妊娠できる身体でよかったね。」

看護師さんのその言葉が、今でも忘れられません。わたしの年齢と表情を見て、なんとか言葉をかけてくださったのだと思います。

2週間後、合格通知が届きました。すぐに大学事務局の信頼できる方に相談すると、「大学としても、個人としても応援しますよ!」と即答してくれました。大学としての公式な言葉ではないとわかっていても、その即答が「この大学なら行ける」と思わせてくれました。

こうして始まった学生生活。夏休み前ぎりぎりまで講義に通い、先生方や事務局のフォローを受けながら、なんとか半期の単位を取得して休学に入りました。7月末、娘が生まれました。

復学はコロナ禍の中でした。それまでも娘を連れて大学に顔を出したり、構内を一緒に走り回ったりしていました。ありがたいことにほぼオンラインで単位を取り切り、在学中からさまざまなプロジェクトや仕事にも関わらせてもらいました。大学内のソーシャルイノベーション創出センターで見習いをしたり、地域のコワーキングスペースでインターンをしたり。その縁でいただいた仕事もいくつかありました。

卒業のタイミングで、娘は幼稚園へ。15時お迎えという現実があったので、「いっそのこと学びを続けよう」と大学院に進みました。社会人の同期たちと同じテーマを学びながら、それぞれの現場や経験から共有されるものに刺激を受け、仕事が生まれ、今後も繋がり続けたいと思える関係ができました。何よりの財産です。

大学・大学院で出会ったのが、souの全体統括である渡邉さやかさんと、事務局を一緒にしている塩入美幸さんです。お2人はわたしにとってロールモデルでした。子育てをしながら、自分のキャリアを”自らつくっていく”姿。一緒に仕事できることが嬉しくて、事務局を引き受けました。

振り返ると、ここまでの人生で計画通りにいったことは、ほとんどありません。頭で考えて選択したことは長く続かず、自分の中の「説明できない謎の自信」を信じたときに選んだことで、人生をつくってきたと思います。

未来はわからない。1人では作れない。だからこそ、自分の中の「きっとこれだ」「いまなのでは」という感覚に正直に、ある意味ノリと勢いで(笑)、直感を見逃さないようにしてきました。

それが正解だったかどうかは、あとからしかわかりません。でも今のところ、その感覚を信じてよかったと思っています。

後編へつづく——

sou事務局
勝山由莉愛(かつやまゆりあ)
長野県立大学1期生。在学中に出産し、7歳の娘の母。
家族とねこたちと、小諸市で循環型のくらしを実践中。自身の経験から、「こどもがしあわせに生きれる社会」を目指して、みんなが「自分らしく生きる」ためにさまざまな分野からアプローチし続けます。これからも、好きな自分でいれる生き方がしたい。

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2026.2.27

SOU-me 小商い体験講座【基礎編】第6回「体験型イベントを企画しよう」開催しました

主催:SSSW
開催期間:2026/01/18
2026.2.27
イベント/セミナー/研修を探している

県内全エリア

1月18日(日)、小商い体験講座「SOU-me」の第6回を開催いたしました 。「好きを形に小さく一歩踏み出す」全6回にわたるプログラムの集大成となる最終回の会場は、青木村にある「道の駅 あおき」内の会場をお借りして、半年間ともに歩んできた仲間の熱気とともに、ワークがスタートしました。

【ワーク1:ビジネスアイデア・セッション(振り返りと深掘り)】

これまでの半年間の歩みを振り返りながら、改めて自分たちのアイデアを深める「ビジネスアイデア・セッション」から始まりました。

今回は最終回から新しく参加された方もいらっしゃったため、講座の中で、大切にしてきた、自分の「ワクワク(好き)」と「地域の困りごと」を掛け合わせるプロセスを全員で共有。 これまでの講座を通じて大切に育ててきた種を、新しく加わった仲間の視点も借りながらブラッシュアップしていきました。

「YES, and」のルールのもと、初参加の方との新しい化学反応も起き、一人では思いつかなかったような豊かなアイデアが次々と形になっていく、集大成にふさわしい濃密な時間となりました。

【小商いを応援するゲストの皆様】

最終回には、地域で実際に「商売」や「場づくり」を実践されている心強いゲストの皆様にもお越しいただきました。
株式会社よしとも 代表 宮入隆通さん(青木村を拠点に、小麦の普及やイベント運営を手掛ける小商いの大先輩)
青木村役場 商工観光移住課 小林課長(地域の挑戦を温かく見守り、サポートしてくださる心強い味方)
株式会社カンマッセいいづな 吉川剛史さん(小商い講座の卒業生。現在は飯綱町でマーケット運営などを通じて挑戦者を支える存在)

ゲストの皆様からは、実体験に基づいたアドバイスや、地域で一歩踏み出すことの意義について熱いメッセージをいただき、参加者の皆さんの背中を力強く押してくださいました。

【ワーク2:体験型イベントを企画しよう】

後半は、自分のサービスを実際に「体験」してもらうための具体的なプログラムを企画しました。

「体験型イベント」の目的は、自分の小商いの魅力を伝えるだけでなく、実際に体験してもらうことでフィードバックをもらい、さらに磨き上げることです。 参加者の皆さんは、「誰に、どんなワクワクを届けたいか」「最後にどんな一言を言ってほしいか」を逆算しながら、30分程度の体験プログラムをシートに書き出していきました。 「とりあえずやってみる」という気楽さを大切に、小さな一歩の解像度をぐっと高める時間となりました。

【参加者からの声を一部紹介します】
「一人でやらなくていいんだ、仲間とやる楽しさを学びました。仲間は本当に大切で、大きな力になります。一歩ずつ進んでいきます!」

「前回の講座での出会いから刺激を受けて、ワクワクの感度が上がりました。やってみたいことへの優先順位が大きく変わり、人と繋がることに喜びを感じられる自分に気がつきました。」

「全6回参加の方も、初めての方も、同じ時間をわくわく共有でき、温かなひとときを過ごせました。講座は終わりますが、ここでできた繋がりを大切にしていきたいです。」

「皆さんの小商いが本当にわくわくするものばかりで、実現したら嬉しいです!続編があればぜひ開催してほしい、そんな気持ちでいっぱいです♡」

【半年間の講座を終えて】

「SOU-me」が目指してきたのは、自分の力で一歩踏み出し、人の力を借りながら自分の力を発揮できる人を増やすことです 。

最終回、自分の「やりたい」という願いを仲間と共に更にワクワクするアイデアにして、自分の体験会を企画し発表する姿は、晴れやかで、一人ひとりが輝いていました。会場中が応援するエネルギーに溢れ、仲間と繋がり続けたいと連絡先の交換や、今後のイベント出店などの情報共有も行われ、講座は一旦終わりになりますが、今回のご縁が続いていく予感を感じました。

最後になりますが、素敵な会場を提供してくださった「道の駅 あおき」の皆様、ご協力いただいたゲストの皆様、そして何より、半年間共に歩んでくださった受講生の皆さん、本当にありがとうございました。これからも、皆さんの「小さく、ワクワクする一歩」を心から応援しています!

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2026.2.26

「無理に決めない」から始まる、私のキャリア

主催:SSSW
2026.2.26
イベント/セミナー/研修を探している

SOU-Nagano DAY6 開催報告

2月22日(日)、SOU-Nagano全6回講座のDAY6「自分の人生とキャリアについて長期視点で考える」を開催しました。ゲストは、株式会社ヒキダシ代表・木下紫乃さん。
木下さんは、ミドルシニア世代の“自分で選ぶ働き方・生き方”を支援し、東京・港区で「昼スナック」を運営。肩書きを外し、本音で語り合える場をつくりながら、そこに集まるリアルな声をもとにセミナーや企業向け研修へと展開されています。まさに「場」から社会を動かしてきた実践者です。
講座で印象的だったのは、「無理やり決めなくていい」という言葉。キャリアは戦略的に設計するものと思いがちですが、木下さんは「自分がやりたいこと」と「世の中の流れ」が重なったところに自然と道が生まれると語ります。振り返ればすべてがつながっている——キャリアとは、後から意味づけしていくものだという視点は、多くの参加者の心を軽くしました。

また、「怒りだけでは人は集まらない。できたことを数え、楽しそうに続けることが大事」という言葉も印象的でした。女性起業家は特に、社会課題への問題意識が強い方も多いですが、そのエネルギーを“持続可能な形”に変えていく姿勢こそが仲間を引き寄せるのだと教えてくださいました。
後半では、「頑張りすぎない」「自分の体の声を聞く」という話にも広がりました。人生は長い。だからこそ、焦らず、自分のペースで。無理をしないことも戦略のひとつ——そんな深い安心感に包まれた最終回となりました。

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2026.2.10

長野から未来を創る6社のチャレンジ「スタートアップ×地域企業 信州ビジネスピッチ」【イベントレポート:後編】

2026.2.10

信州スタートアップステーション(SSS)では、長野での創業を考えている方や、支援機関の方向けのイベントやセミナーを定期的に開催しています。

12月16日に長野市内で開催された「スタートアップ×地域企業 信州ビジネスピッチ」では、基調講演とリバースピッチに続き、長野県内外で活躍する6社のスタートアップによるピッチプレゼンテーションが行われました。

メンタルヘルスケア、体験型エンターテインメント、観光土産EC、食事管理アプリ、食品廃棄物アップサイクル、森林資源循環など、多様な分野で課題解決に挑む起業家たちの熱い思いが語られました。当日の様子をレポートします。

【登壇者】

スタートアップピッチ登壇企業(6社)
株式会社ピノビスタ、SAKE ART LAB.、Local Knot株式会社、株式会社AInnovate、ゴミナクス株式会社、株式会社グリーンベネフィット

基調講演・フィードバック
株式会社MTG Ventures 代表取締役 藤田豪氏

進行役:有限責任監査法人トーマツ

「ゼロからプラスへ」ポジティブなメンタルヘルスケアアプリ「Welloom」

最初に登壇したのは、株式会社ピノビスタの松井氏です。同社は、メンタルヘルスケアアプリ「Welloom」を開発しています。松井氏自身、会社員時代にメンタル不調を経験したことが創業のきっかけだと語りました。

松井氏「日本ではメンタル不調になっても相談する人が少ない。評価が下がるのではないか、偏見を持たれるのではないかという懸念があるからです」

「Welloom」は、AI対話型診断により24時間いつでも利用できるWebアプリです。最大の特徴は、「ポジティブ認知行動療法」を採用している点だと松井氏は説明しました。

松井氏「従来のメンタルヘルスケアは、マイナスをゼロに戻すことが目的でした。しかし私たちは、ゼロからプラスへ、さらなる成長を支援することを目指しています

アクセラレーションプログラムへの参加を通じ、事業戦略が進歩したと振り返りました。当初は利用者数を追い求めていましたが、「数よりも満足度や質を重視する」方向に舵を切ったといいます。ベータ版リリース後2週間で2桁のユーザーを獲得し、諏訪信用金庫から融資も受けることができました。

2025年1月の正式リリース後は、個人向けから法人向けへと展開し、将来的には統合的なウェルネスプラットフォームへの成長を目指しています。

藤田氏からは、「ペルソナをもっと絞り込む必要がある」とのフィードバックがありました。また、「AIだけでなく、人間の要素やコミュニティ機能も検討してはどうか」との提案もなされました。

お酒を飲みながらアートを楽しむ新しい体験「SAKE ART LAB.」

SAKE ART LAB.共同代表である目黒氏は、「ペイント&シップ」という体験型エンターテインメント事業を展開しています。「ペイント&シップ」とは、欧米発祥のお酒を飲みながら絵を描く体験です。2010年代からマーケットが育ちつつあります。

SAKE ART LAB.の展開する事業では、インストラクターの指導のもと、2時間で1つの作品を完成させることができ、友人やグループで楽しめる点が特徴です。約1年間でこれまでに56回開催し、延べ354名が参加。Google口コミでは22件の評価が集まっており、平均5.0という高評価を獲得しています。

アクセラレーションプログラムへの参加を通じて、活動範囲が大きく広がったといいます。松本市での初開催や、小布施町の北斎館とコラボしたイベント、軽井沢のクリスマスマーケットとのコラボイベントも企画し、地域×観光×体験の可能性も感じたと振り返ります。また、そういった特別企画から通常イベントに誘導する導線を作ることもできたと振り返りました。

また、県内6事業者とのミーティングを経て、長野市の善光寺門前で酒蔵「西之門」を運営する株式会社よしのやとの協賛イベントが決定したことも報告しました。

目黒氏「酒蔵で日本酒を飲みながら北斎の絵を描く体験が出来る本イベントは、非常に嬉しいことに告知から一週間以内に満員御礼となりました。酒蔵×アート体験というのは全国的にも珍しいので、可能性やニーズの高さを伺えた結果となりました」

今後は県内6地域への展開を予定しており、将来的にはフランチャイズ展開も視野に入れています。

藤田氏は、「県内展開で広げていくのもいいけれど、酒蔵とアート体験を組み合わせたプログラムとしての展開は今後伸びる可能性がある」と指摘しました。また、「著作権が切れた作品を活用するのは良い戦略だ」と評価しました。

観光土産ECと事業承継を組み合わせた「Knotモデル」

Local Knot株式会社の藤澤氏は、観光土産のECサービスと事業承継支援を組み合わせた独自のビジネスモデル「Knotモデル」を提案しました。

Local Knotが注目するのは、地域の観光事業者の後継者不足による休廃業の問題です。

藤澤氏「現状の課題として、全国的に黒字でも後継者不足で休廃業する企業が50%以上あります。その理由として、後継者不足は3割に上り、後継者不足が地域経済の衰退に繋がっていると私たちは考えています。長野県でも、後継者不在割合は約50%以上となっています」

そこでLocal Knotはまず「受け継ぐ」ことから事業をスタートさせました。長野駅前のホステルを事業承継し、1年で売り上げ1.5倍の事業再生を達成。地域の交流の場として活用を進めています。

アクセラレーションプログラムでは、金融機関や地域の事業者とのヒアリングを行い、事業承継の本質的な問題は「引き継ぎ手不足」ではなく、引き継ぎ元の「案件化不足」だと気づいたことを発表しました。だからこそ、観光事業者と継続的な関係性を保ちながら事業承継を推進する事業が地域に必要だと訴えました。

同社のサービスは、宿泊施設でQRコードを受け取り、客室で商品を閲覧・購入し、自宅に配送されるという仕組みです。特徴的なのは「ストーリーメディア機能」で、商品の背景や生産者の思い、地域課題を伝えることができます。差別化のポイントとして、ストーリー性の重視、地域活動者やインフルエンサーとのコラボレーション商品セット、事業承継との連携を挙げました。

藤田氏からは、「地域の小売店を潰さず協働していく仕掛けが必要。土産屋にQRコードを貼り、そこからの売上に対してキックバックする仕組みも検討してはどうか」との提案がありました。また、「外国人向けにストーリーをどう訴求するか工夫が必要」とのアドバイスもなされました。

「毎月1000円で体重1kg減」食事管理の自動化

株式会社AInnovateの遠藤氏は、食事管理を自動化するアプリを開発しています。毎月1000円の課金で、毎月1kgの減量を目指します。

遠藤氏「既存の食事管理アプリは9割が挫折します。認知負荷が高く、徒労感があるからです」

同社のアプリは、3ステップで完結します。体重計に乗る、帳尻合わせプランが策定される、提案リストから選択する。過去の記録ではなく、未来の行動指針を示す「未来志向」が特徴です。

遠藤氏自身、ボディメイク大会に出場した経験があり、8ヶ月で体重を12kg増やし、その後10kg減らした実績があります。また、大手事業会社でのWeb・アプリ開発経験や、上場企業向けのAI導入実績も持っています。

ターゲットは都内で働く激務の女性で、「食の自制は可能だが、調整する体力がない層」を想定しています。2025年2月のリリース後、1年で1.5万人のユーザー獲得(東京都内中心)を目指し、将来的には英語化して国内外に展開する計画です。

藤田氏は、「ターゲット層からは外れているがぜひ使ってみたい」と興味を示した上で、「価格設定を再検討した方がいい。1000円は安すぎる可能性がある」と指摘しました。

食品廃棄物から価値を生み出すバイオテクノロジー

ゴミナクス株式会社の中島氏は、食品廃棄物から有効成分を抽出し、バイオ製品に転換する技術を提供しています。

同社は長岡技術科学大学発のベンチャーで、35年にわたる研究の蓄積があります。

中島氏「日本の食品廃棄物の85%が焼却処理されており、約424億円の処理費用がかかっています。また、非上場企業の75.1%が脱炭素化ビジネスに未着手で、ノウハウ・人材・技術が不足しています」

同社の技術は、10種類以上の廃棄物から抽出実績があり、各廃棄物に合わせてカスタマイズした抽出が可能です。抗菌性や保湿性の付与、無色透明なフィルムへの加工もできます。

ビジネスモデルは、当初の仲介プラットフォーム型から研究開発特化型へと進化しました。収益源は、特許ライセンス、知的財産権譲渡、仲介手数料です。

アクセラレーションプログラムを通じて、15社以上のアップサイクルメーカーと業務連携を構築し、研究開発から製品化・量産化まで一気通貫で支援できる体制を整えました。

藤田氏からは、「コスト削減よりも高機能化で差別化する方向性が良い。『なくてはならない』製品の開発を目指してほしい」とのアドバイスがありました。

森林資源の循環で地域に新たな価値を

最後に登壇したのは、株式会社グリーンベネフィットの岩見氏です。代表自身が森林組合の参与を兼務する林業従事者という、異色の経歴を持つスタートアップです。

同社の主要事業は2つあります。1つ目は「木の糸事業」で、木材チップからセルロースを取り出し、機能性のある糸にして製品化するものです。大阪・関西万博では医師のユニフォームに採用され、半年間の使用後にリサイクルする計画です。

2つ目は「木材住宅事業」で、根羽村の杉とヒノキを使った木製の災害避難所「Hut(ハット)」を開発しています。

岩見氏「72時間以内に素人でもインパクトドライバー1台で組み立て・解体が可能で、震度6から7の耐震性があります。価格は約300万円で、コンパクトカー1台分のスペースに収納できます」

同社のモデルは、植林から育成、伐採、製品化、リサイクル、再造林という循環型です。特に注目すべきは、「時間価値の創造」という考え方です。東御市のワイナリーと連携し、その年ごとのブドウの木の枝で木の糸を染色して製品化をするなど、年次ごとのコレクションやヴィンテージの概念を持ち込んでいます。

同社はプロジェクト型で運営しており、オープンプロジェクトとして地域の事業者と協業し、各地域の特性を活かした製品開発を行っています。

藤田氏は、「森林組合発のスタートアップは珍しく、完成度が高い」と評価しました。また、「ワイナリーとの連携など、時間価値化の取り組みが秀逸。他地域への展開可能性も大きい」と述べました。

長野から始まる共創の未来

すべてのピッチが終了した後、長野県産業労働部の米沢部長が登壇し、「県としてスタートアップ支援の機会を今後も継続的に増やしていきたい」と今後の展望を語りました。

イベントを通じて、メンタルヘルスからアート、森林資源活用まで、多様な分野で地域の課題解決に取り組むスタートアップの姿が明らかになりました。

また、基調講演やリバースピッチで示された「対等なパートナーシップ」の理念のもと、地域企業とスタートアップが協業する土壌が長野県で着実に形成されつつあることが感じられるイベントとなりました。

今回のイベントは、主催の長野県、協力の長野経営者協会、サポーター企業4社、発表を行ったスタートアップ6社の協力により実現しました。長野県では、今後もこのような出会いの場を継続的に設け、地域のスタートアップエコシステム形成を推進していきます。

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2026.2.10

地域とスタートアップの共創に向けて「スタートアップ×地域企業 信州ビジネスピッチ」【イベントレポート:前編】

2026.2.10

信州スタートアップステーション(SSS)では、長野での創業を考えている方や、支援機関の方向けのイベントやセミナーを定期的に開催しています。

長野県では、スタートアップや県内企業が成長・共創していくエコシステムの形成を進めています。12月16日に長野市内で開催された「スタートアップ×地域企業 信州ビジネスピッチ」では、地域のスタートアップをVenture Capitalとして長年支援されてきた株式会社MTG Venturesの藤田豪氏による基調講演が行われました。

また、スタートアップとの共創を期待する県内企業4社によるリバースピッチも実施され、地域企業とスタートアップの新たな連携の可能性が示されました。当日の様子をレポートします。

【登壇者】基調講演
株式会社MTG Ventures 代表取締役 藤田豪氏
1974年秋田県生まれ。1997年、日本合同ファイナンス株式会社(現・ジャフコグループ株式会社)へ入社。2004年の設立時よりうち16年を中部地区を中心に投資活動を実施。地域におけるスタートアップの協力を熟知し、10社以上のIPOを実現。2018年、株式会社MTG Ventures代表取締役就任。MTGグループのCVCを立ち上げ、主にヘルスケア・アクティブへの投資を実行。2022年地域課題を解決する地域化ファンド「Central Japan Seed Fund」設立。名古屋大学特任准教員、秋田大学客員教授。

県内企業リバースピッチ登壇企業(4社)
アルピコ交通株式会社、長野都市ガス株式会社、長野朝日放送株式会社、株式会社丸富士

地域課題は共通課題として事業化できる

基調講演の冒頭、藤田氏は自身の活動拠点について説明しました。秋田県出身で、大学卒業後は主に名古屋を拠点に活動している藤田氏は、「地域を良くするために、地域の人だけでなく外部からの知見も取り入れる必要がある」と強調しました。

藤田氏が代表を務める地域ファンドでは、物流DX、外国人技能実習生の生活支援、地域の音楽配信者支援など、様々な分野の企業に投資していることを紹介しました。

藤田氏「航空会社の投資事例では、地方路線の開拓による観光振興を目指しています。例えば、関空から富山便が飛ぶことで、外国人観光客が富山から飛騨高山へと足を伸ばす時間的余裕ができる。そうすると外国人の方がお金を使える時間が増えるわけです」

また、東北大学発のスタートアップで放射線治療計画をAIで効率化する企業の事例も紹介されました。従来は1人の治療計画作成に6時間かかっていたものを、AIで20分に短縮するという技術です。

藤田氏「地方ほど、医者も看護師もいません。だから人間がやらなくていいことは機械がやる。地域課題は小さなことではなく、共通課題として事業化でき、スケールする可能性があります

さらに、藤田氏はスタートアップの定義について、独自の考えを示しました。

藤田氏「スタートアップとは、自分たちの力で世の中を変える覚悟を持ち、共感する仲間を集め、外部資金の調達を行い、課題解決に挑戦し、急成長を目指す起業家及びチーム、会社のこと

中でも、投資判断で最も重視するのは「覚悟の深さ」だと藤田氏は語ります。

藤田氏「なぜあなたは、なぜ今、なぜここで、この事業をやらなきゃいけないのか。その覚悟の深さが深ければ、やめないんです。やめなければ成功するんです。やめること=失敗。やめなかったら、10年だろうが20年だろうがやりきればそれは成功です

もう一つの重要な要素が「共感を得る力」です。1人でやれることは小さいけれど、仲間を集められない限り、事業は広がらない。共感してもらう力があれば、仲間が集まると藤田氏は訴えました。

日本のスタートアップ環境については、アメリカとの差が開いている現状を指摘しました。政府のスタートアップ育成5ヶ年計画についても言及し、「アメリカと比較すると、日本では政府や自治体がスタートアップに積極的に発注し、売上を立てる支援までは至っていない」と課題を示しました。

「身近に起業家がいるかどうか」が地域を変える

また藤田氏は、日本で起業家が少ない理由について、失敗への恐れだけでなく、「身近に起業家がいるかどうか」が大きな影響を与えると指摘しました。

藤田氏「世界中、起業家がいるところは周りに起業家が当然ながらどんどん増えている。逆に言うと、いろんな地域で起業家が少ないから、ロールモデルが少ない。でも、1人ロールモデルとなる人が出てくると急に変わる。この1人をいかに増やせるかが重要です

具体例として、新潟県や福井県を挙げました。福井県では2017年まで10年間上場会社がなかったものの、この10年ほどで7〜8社が上場するなど、「わかりやすい事例ができると、そこから広がっていく」と説明しました。

また、秋田出身のドローンショー企業の社長の例を挙げ、失敗に対する正しい理解の重要性も強調し、ロールモデルの存在が地域に与える影響の大きさを語りました。

藤田氏「チャレンジして失敗しても、死ぬわけではないし、借金を背負うわけでもない。そういう失敗を正しく理解していないことが問題です。秋田出身の人たちの中には、前向きでアグレッシブにチャレンジする人がいる。そういう話を聞くことで、周りも勇気づけられます」

藤田氏は秋田県での具体的な取り組みについて詳しく説明しました。秋田県は消滅可能性都市全国一位という危機感から、「AKITA STARTUP」という取り組みをスタートさせています。

特筆すべきは、知事が直接スタートアップとの対話を行うなど、トップダウンでの推進が効果を上げている点です。2年間で16社が秋田県に進出し、実証実験をスタートまたは支社を設立しています。

具体例として、特定技能外国人材の紹介・支援を行う企業が進出したことで、インドネシア人労働者が地域に定着し始めている事例が紹介されました。その他、ライドシェアサービス、保育園留学、高齢者と若者の交流プラットフォーム、オンラインリハビリなど多様な事例が紹介され、地域課題を解決しながら新たな価値を創出しているスタートアップの姿が示されました。

地域企業とスタートアップの連携の可能性。対等なパートナーであることが鍵

基調講演の締めくくりとして、藤田氏は地域企業とスタートアップの連携において最も重要なマインドセットについて語りました。

藤田氏「スタートアップは一攫千金を目指すという古いイメージではありません。あらゆる分野の課題解決に取り組む存在です。地域企業がスタートアップと連携する際は業者として扱うのではなく、対等なパートナーとして一緒に課題解決に取り組む姿勢が重要です

また、テクノロジーの普及スピードが加速している現代について、ポケモンGOが5000万人のユーザーを獲得するのにわずか19日しかかからなかった事例を挙げ、「良いアイデアはすぐに広がる可能性がある時代になった」と強調しました。

成功事例として、秋田県男鹿駅の旧駅舎を活用したクラフトサケ醸造所「INEtoAGAVE BREWERY」、山形県鶴岡市の「ショウナイホテル スイデンデラス」、岩手県盛岡市の障がい者によるアート作品を事業化した「HERALBONY(ヘラルボニー)」などを紹介しました。

藤田氏「地域の資源や人材を活かした事業が大きく成長する可能性があります。探して一緒にやればいいんです。地域でいいことやっている人がいるはずで、そういう人がどんどん繋がって、日本の地域を良くしていける」

地域企業4社が求める連携の形

基調講演に続き、県内企業4社によるリバースピッチが行われました。各社が抱える課題と、スタートアップに期待する連携内容が具体的に示されました。

アルピコ交通株式会社からは、20代の若手社員2名が登壇し、「バックオフィス業務の効率化」をテーマに発表しました。同社は慢性的な人員不足に直面しており、特に貸切バス運賃見積もり業務と遺失物管理業務の効率化を求めています。

貸切バス運賃見積もりでは、お客様や旅行代理店からFAXやメールで届く情報がバラバラで、担当者が情報を読み取り、運転時間や走行距離、運行経路を割り出す作業に負担がかかっています。遺失物管理では、多い月には1000件ほどの遺失物があり、営業所の従業員が他の業務と並行して対応している状況を改善したいと述べました。

同社の強みとして、バス・タクシーの車両台数が県内No.1(約400台)であること、長野市・松本市を中心に県内主要都市で事業展開していること、創業100年超のノウハウを有していること、国内外の幅広い顧客との接点を持つことなどを挙げました。

長野県東北信の8市3町に天然ガスを供給している長野都市ガス株式会社は、地域課題の解決を目指した新たな事業の創出を検討していると発表しました。

検討領域の一つとして、「地域のレジリエンス向上」を取り上げ、防災診断や備蓄品サービス、ショールームでの防災体験拠点としての活用などを挙げました。

「総合防災ソリューション事業」は、同社の掲げるビジョンである「安心安全な社会」と直結し、既存事業との親和性も高い領域であると説明しました。

同社の強みとして、9万5000件の顧客基盤と、点検や保安点検などを通じたお客様との直接対話による信頼関係を挙げ、「質の高い顧客接点と信頼関係が事業の推進力になる」と述べました。

長野朝日放送株式会社からは、信州元気プロジェクト本部としても活動する若手社員が登壇しました。

同社はテレビメディアが取り組む新規事業を模索しており、「既存のテレビビジネス(企業からお金をもらって番組を流す)にとらわれない分野や企業と繋がり、信州に貢献し県民に役立つ事業を展開したい企業と手を組みたい」と説明しました。

具体的な取り組みとして、今年春にスタートした「発酵プロジェクト」を紹介しました。このプロジェクトは部署横断で行われており、発酵に関する情報を自社番組で紹介したり、発酵バレーNAGANOとの交流を行っていると説明しました。将来的には「信州を発酵の里にするような発酵食品のお土産の展開」や「甘酒のスタンドを空港などインバウンドが集まる場所に設置」などの可能性を検討していると述べました。

株式会社丸富士からは代表の倉石氏が登壇し、人手不足や原材料高騰など様々な環境変化の中で、ベンチャー企業の思考を社内に取り入れ新たな視点を得るためにサポーター企業に登録したと説明しました。

同社は70年近く食品卸売業を主に行っており、小麦粉やチョコレート、乳製品、厨房機械などをメーカーから仕入れ、ベーカリーや洋菓子店、ホテルレストラン、食品工場などに販売しています。事業規模は食品卸売事業で約10億円、EC事業で約3億円となっています。

スタートアップ企業に求める重点領域として、地域素材や規格外原料、食品廃棄物を活用したフードロス削減と事業性の両立、OEMや物流まで見据えた事業設計、地域食品のEC展開などを挙げました。同社が提供できる環境として、食品領域における様々な知見や顧客、物流インフラ、製造工場、販路があると述べました。

4社のリバースピッチを通じて、地域企業が抱える具体的な課題と、スタートアップとの協業による解決への期待が明確に示されました。藤田氏の基調講演で語られた「対等なパートナーシップ」の理念を受け、実際に地域企業が動き出している様子が伝わる内容となりました。

長野県では、このような地域企業とスタートアップの出会いの場を今後も継続的に設けていく方針であり、地域のエコシステム形成に向けた取り組みが着実に進んでいます。

後編に続く>


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2026.2.10

地域のつながりを次世代に引き継ぐために。4事業者による事業承継プレゼンテーション【後編】事業承継マッチングフォーラムレポート

2026.2.10

2026年1月26日、信州スタートアップステーション長野拠点にて「長野県事業承継マッチングフォーラム」が開催されました。事業を始めたい人と継いでもらいたい人をつなぐこのイベントには、現地とオンラインあわせて多くの参加者が集まり、第一部では日本政策金融公庫と株式会社ライトライトによる講演とパネルディスカッション、第二部では地元4事業者による事業承継プレゼンテーションが行われました。

後編では、第二部として行われた地元4事業者による事業承継プレゼンテーションの内容をお届けします。それぞれに異なる背景と可能性を持つ3つの事業が、新たな担い手との出会いを求めて登壇しました。

<登壇者>
トレーラーハウスカフェ・シュクレ 佐藤恵子氏
【長和町】飲食店(カフェ)

健生庵 山愚 滝澤暁氏
【木曽平沢】飲食店(手打ち十割蕎麦)

能登屋鰹節店 石坂正志氏
【長野市】小売店(鰹節等のだし専門店)

おきな菓子舗・翁珈琲 生田淳一氏
【上田市】小売店(菓子等)、飲食店(カフェ)

味と想いを引き継ぐトレーラーハウスカフェ「シュクレ」

長和町役場から白川湖方面へ車で10分ほどの場所にある「シュクレ」は、2020年7月に開業したトレーラーハウス型カフェです。観光地的な好立地ではないものの、地元のお客さんを中心にリピーター、テイクアウト事業に支えられ、無理のない経営を続けています。

佐藤さんは、ブランシュ高山スキー場のレストランで長く働いており、そこで提供していたカレーが名物でした。そのカレーをオフシーズンでも食べたいという声が多かったこと、また、娘さんが長和町に戻ってきたことなど家族の生活環境の変化もあり、仕事と生活を両立できる形として、自宅の隣での開業を選択しました。店舗型ではなくトレーラーハウス型にしたのは、知人業者との繋がりがあり導入しやすかったことと、当初から移転も視野に入れていたためです。

開業から約5年半、コロナ禍を含む期間も乗り越えて営業を続けています。営業は春から秋が中心で年間180〜200日程度、ほぼワンオペに近い少人数運営で成り立つビジネスモデルです。

主力商品はスキー場時代からファンのいるカレーで、味、世界観、雰囲気が評価され、固定ファンがついていることが強みです。

事業承継を決断した背景は、佐藤さんの目や足などの不調によるものです。娘さんは別の業種で事業経営をされているため、家族内での承継の予定はなく、第三者承継を前提に検討されています。

トレーラーハウス型のため、将来的に場所を移して再開することも比較的現実的です。佐藤さんは、現在の場所での継続には必ずしもこだわっておらず、移転前提の承継が現実的と考えています。味、お店、思いを引き継いでほしいという気持ちはありますが、やり方、形、場所にはこだわらないという非常に柔軟な姿勢です。

トレーラーハウス本体、設備、レシピ、屋号などを含めた一体承継を想定しています。

佐藤氏「実績のある商品をすぐに提供が可能で、ゼロから創業するより初期投資を抑えられるというメリットがあると思います。トレーラーハウスという形態はライフスタイル型経営にも向いた案件です。立地のいいところでやっていただければかなり人気の出るお店になると思うので、ぜひご検討いただければありがたいです」

独自技術を持つ十割そば「健生庵 山愚」

「健生庵 山愚」は、野沢温泉村から少し山の方に入った場所にある蕎麦店です。お店の前は小川が流れており、夏でも涼しいエリアです。経営する滝沢氏は、30年前に前オーナーから店を購入し、大幅な改装を行いました。

この店の最大の特徴は、手切りの100%そば粉のそばを専門としていることです。滝沢氏によると、これは非常に高度な技術と知識が必要な技法で、通常のそば打ちとは全く異なる製法だといいます。県外から多くの客が訪れるファンが多い店で、リピーターも多いのが特徴です。

滝沢氏「普通のそば打ちをやっている方が私のそばみたいなものを作ろうと思っても、絶対できないわけです」

30年前にそば作りの研究グループを設立しましたが、その技術の難しさから全員が最終的に断念したといいます。独自の技術によって麺の形がしっかり保たれており、経験豊富なそば職人でも真似するのは困難とのことですが、滝沢氏は後継者に技術を伝える意欲があると語っています。

会場からの質問では、技術習得の期間について「手が動いて教えられるうちにやりたい」と答え、非常に高度な技術であることが改めて確認されました。

300年の伝統を持つだし専門店「能登屋鰹節店」

長野市の中央通り沿いにある能登屋鰹節店は、約300年前に創業し、約200年間続いている伝統的な鰹節店です。店主の石坂氏は10代目にあたります。

石坂氏「昭和時代から大体300年やってきています。私の祖父である8代目が現在の店舗を設立しました。この事業は300年の歴史があり、非常に希少性が高いため、ぜひ残していきたいと思っています」

店舗は鰹節と削り節、目節などを専門としており、小売と卸売の両方に対応しています。しかし、コロナ禍の影響やオリンピックに伴う交通整備後の観光客の動向変化など、さまざまな要因で卸売事業が減少しています。以前は卸売が売上の5割程度を占めていましたが、現在は減少傾向にあります。家族内での承継予定はなく、事業の希少性と歴史的価値から後継者を求めています。

石坂氏「事業承継の希望としては、強い営業力を持つ方か、ラーメン店が製麺所を持つように、製品を直接活用できるような事業を持つ経営者です。現在の事業規模だけでは課題があるため、鰹節製品を活用できる補完的な事業との拡大や統合が必要だと思います」

店舗がある中央通りの立地は観光客に非常にアクセスしやすく、特に善光寺御開帳などのイベントで訪問者数の増加が期待できる利点があります。最近はインバウンドの客も非常に多いです。

会場からは、仕入れ業者との関係継続の可否について質問があり、石坂氏は「サプライヤーとの関係は紹介可能で、これがないと事業は成り立ちません」と回答しました。また、顧客の要望に応じたオリジナルの出汁を作ることも可能だと説明しました。

温泉地の再生と新しい湯治文化の創造「おきな菓子舗」

最後に登壇したのは、上田市鹿教湯温泉で温泉まんじゅうを製造・販売する土産物店「おきな菓子舗」、コーヒー店「翁珈琲」を経営する生田淳一氏です。生田氏は、事業承継だけでなく、地域全体を活性化させる「しあわせ温泉 文珠テラスプロジェクト」というビジョンを提示しました。

鹿教湯温泉は、1956年に国民保養温泉地に指定された歴史ある温泉地です。観光温泉と湯治温泉では役割が大きく異なります。湯治温泉は病気や怪我を癒やすというイメージがありますが、生田氏は本来の湯治の本質について説明しました。

生田氏「本来の湯治の本質とは、本当の自分に戻る場所だということです。何週間、何ヶ月滞在する中で、社会を離れて、そういった時間を持つ。病気を治して、何がしたいんだということを考える。それが全国にある湯治場の本質的な役割だったと私は考えます」

しかし、団体旅行などが主流になり、方向性が変わってきました。それによって、地域の事業者は非常に厳しい状況に置かれています。地域として事業を継続させたいという問題意識から、今回のプロジェクトが生まれました。

プロジェクトでは、生田氏の所有する店舗をひとつの起点に、さまざまな事業者と共創し、地域の活性化を目指します。

まずは最初のステップとして、町の中心にある、生田氏の店舗の隣にある20席程度の元カレー屋の店舗や、温泉の源泉を有する土地の継承先を探しており、飲食店や民泊事業者との協働を期待しています。

鹿教湯温泉には複数の源泉があり、全部の源泉に引湯しています。低い温度の源泉もあるため、加温せずに使える温泉もあります。この立地は源泉に一番近く、一番新鮮で、なおかつ事業がやりやすい場所です。

生田氏自身も後継者がいない状態で、地域で事業承継を希望しています。事業者がどんどん減っていく地域の現状に対し、温泉を残したい、この温泉を活用して自然も活用して、楽しい場所、幸せの場所、本当の自分に戻る場所としての役割を提供できるような環境を作りたいという強い思いがあります。

多様な事業承継の形――それぞれの未来へ

4つの事業プレゼンテーションは、事業承継の多様性を示すものとなりました。

それぞれに異なる魅力と課題がありますが、共通しているのは、事業者が長年培ってきた技術や思い、地域とのつながりを次世代に引き継ぎたいという強い願いです。

前編でも語られたように、事業承継は個人の問題ではなく、地域全体の課題です。この日登壇した4つの事業が新たな担い手と出会い、それぞれの形で未来へとつながっていくことを期待しています。

ARTICLE
2026.2.10

事業を「継ぐ」という選択肢――小規模事業者の未来を拓く、事業承継マッチングの最前線【前編】事業承継マッチングフォーラムレポート

2026.2.10

2026年1月26日、信州スタートアップステーション長野拠点にて「長野県事業承継マッチングフォーラム」が開催されました。事業を始めたい人と継いでもらいたい人をつなぐこのイベントには、現地とオンラインあわせて多くの参加者が集まり、第一部では日本政策金融公庫と株式会社ライトライトによる講演とパネルディスカッション、第二部では地元3社による事業承継プレゼンテーションが行われました。

<第一部登壇者>
高橋和樹氏
日本政策金融公庫 国民生活事業本部
事業承継支援室 事業承継支援第一グループ

東京・秋田支店での勤務を経て、令和5年4月から現職。経営者の事業承継に対する意識喚起や課題解決を使命とし、事業承継マッチング支援やセミナーへの登壇等に取り組む。

江尻竜也氏
株式会社ライトライト
事業推進チームマネージャー 宮崎オフィス長

後継者不在にお悩みの事業者に対して、事業承継プラットフォーム「relay(リレイ)」を活用した経営資源の承継を支援。個別面談を通じて、地方自治体と連携しながら、後継者不在の事業者を支援した地域課題解決のための企画事業も展開。企業の新しい選択肢の育成のための企画立案や目的の達成に取り組んでいる。一児の父。

「継ぐスタ」によるリスクを抑えた創業の選択肢

まずは日本政策金融公庫の高橋氏が、同公庫の事業承継マッチング支援について説明しました。同公庫は国が100%を保有する政策金融機関で、国民生活事業、農林水産事業、中小企業事業の3つの事業から成り立っています。中でも高橋氏が所属する国民生活事業では小規模事業者の融資や、創業希望者の融資をしており、融資先の約半数が個人事業主という、まさに小規模事業者を支える存在です。

日本公庫の事業承継マッチング支援は、後継者不在企業と、これから創業をする人、事業規模を拡大したい人を引き合わせる取り組みです。

5つの特徴があり、第一に、中小企業・小規模事業者が対象で、全国152支店のネットワークを駆使し、広く相手先を探すことが可能であること。第二に、「継ぐスタ」として、事業を継いで創業したい方を支援していること。第三に、オープンネームによる後継者探しを実施していること。第四に、担当者によるサポートが受けられること。そして第五に、譲渡側・譲受側ともに無料で利用できることです。

注目すべきは、成約した譲渡企業の特徴です。年商5,000万円以下が約7割、従業員5人以下が約8割と小規模事業者が中心。さらに、約3割が赤字企業、約5割が債務超過企業という経営が悪化している状況でも成約に至っています。飲食・宿泊を中心にさまざまな業種が成約に至っています。

続いて、「継ぐスタ」とは、事業を受け継いで創業する形態を示す言葉(日本公庫による故障)です。日本公庫では、創業希望者は、一般的なM&Aの対象となりにくい小規模事業者の後継者になり得ると考えており、長年の創業支援で培ったノウハウを活かし、「継ぐスタ」の実現に向けて継続的な支援に取り組んでいます。

高橋氏「『継ぐスタ』には大きく2つのメリットがあります。1つは、譲渡側の技術やノウハウ、地域での知名度や信用を引き継ぐことで、スタートから安定した経営が実現できる可能性があること。もう1つは、既存の店舗や設備を活用できるため、初期費用を抑えられる可能性があることです」

一方で留意点もあります。やりたいことが具体的であればあるほど、適した事業が見つかりにくくなること。魅力的・高収益の事業は競争が激しく、条件が厳しくなること。そして、経営の自由度が制限される可能性があることです。

「継ぐスタ」を実現するには、譲渡先の思いを尊重することが重要です。多くの譲渡先は「誰でもいい」という考えではなく、長年続けてきた事業に対して深い思いを持っています。継ぎ手候補者は、その思いを尊重することに加え、継ぐスタ計画書に自身の経歴や経営方針、活用できる知識・技能などを記載し、自分のことをよく知ってもらうことが求められます。

事業承継は個人の問題ではなく地域全体の課題

続いて、株式会社ライトライトの江尻氏は、2025年に休廃業した事業が約6万7949件にのぼるというデータを示しました。前年の約6万9000件からわずかに減少したものの、依然として深刻な状況が続いています。

江尻氏「大廃業時代というワードを聞いたことがある方もいらっしゃるかと思います。今まさに事業承継支援が求められている時代です。休廃業をした事業を紐解いていくと、このうち約半数が黒字のまま休廃業を余儀なくされており、端的にもったいない状態です。さらに深掘っていくと、約3割の方が担い手の確保ができないまま、ご自身で諦めてしまっているというのが実情です」

長野県内でも、2024年のデータによれば後継者不在率は下がっているものの、依然としておよそ半数の企業が後継者不在の状況にあります。歴史ある老舗企業が多い長野県において、この課題は喫緊の問題となっています。

江尻氏は「事業承継は個人の問題ではないか、という声もあります。しかし実際に、一軒のお店がなくなるだけで地域に大きな影響があります。雇用の減少による人口流出や、選択肢が狭まること、さらに廃業が増え、チャレンジが起こらない寂しい地域になってしまう。地域維持の観点からも、事業承継は地域課題だと言えます」

一方で、小規模事業者の受け皿が少ないという課題があります。地域として「後継者を一緒に探しましょう」と言える社会への変革が必要です。

株式会社ライトライトが運営する「relay(リレイ)」は、2020年に開始したオープンネーム方式の事業承継プラットフォームです。

従来の匿名(ノンネーム)方式では、所在地や売上高、業種などの限られた情報のみが提供され、収益性に基づいて初期判断が行われます。その結果、収益が中程度の事業や負債を抱える事業は、選別段階で除外されることが多くなります。

江尻氏「すべての事業には固有の価値と魅力があり、正当に評価されるべきです。オープンネーム方式では、事業者の顔や名前、背景ストーリー、大切にしている価値観や理念を発信し、財務的な基準だけでなく、感情的なつながりや共有する価値観を重視しています」

「relay(リレイ)」の特徴は、行政機関、自治体、商工団体、金融機関との幅広い連携にあります。また、有料職業紹介の許可を取得しているため、後継者候補の採用支援も可能です。さらに不動産許可も取得しており、店舗の居抜き譲渡や空き物件の引き渡しにも対応できます。料金体系は、譲渡側は無料、譲受側が成功報酬35万円(税別)となっています。

成約までの期間は平均3〜4ヶ月で、最短では1ヶ月以内の事例もあります。これは日本政策金融公庫の平均約1年と比較すると、かなり短期間での成約が実現していることになります。

オープンネーム方式のメリットは、事業者が大切にしてきたことをしっかりと伝えられることにあります。一方で、風評被害のリスクや、知らない人から直接連絡が来る可能性もあります。そのため、「relay(リレイ)」では1事業者に対して1名のコーディネーターがマッチング支援を行い、円滑なコミュニケーションをサポートしています。

江尻氏「事業承継はあくまでも手段です。この事業承継を通して、担い手が増加し、関係人口が増加する。それによって多様性が生まれ、経済が回っていく。そこからさらにチャレンジができていく。自走可能な地域社会が生まれてくるんです」

「この人に託したい」と思ってもらうには

第一部の最後には、株式会社日本政策金融公庫 国民生活事業本部 事業承継支援室 事業承継支援第一グループ グループリーダーである大沼真樹氏を迎え、江尻氏とのパネルディスカッションが行われました。

まずは、「売り手が『この人に託したい』と心を動かされる買い手の共通点はあるか」という問いかけに、江尻氏は「真剣さ」が大切であると伝えました。

江尻氏「興味本位で話を聞きたいというスタートは問題ありませんが、実際の面談に進むには、事業計画書を練ってくるなど、真剣に考えた証を示すことが大切です」

続いて大沼氏は、「熱意とリスペクト」を挙げました。売り手の事業手法や哲学、仕事への愛着を尊重し、上から目線を避けることが求められます。

大沼氏「買い手の方が事業規模が大きかったり大企業勤務の経験があったりする場合、自分のスタンダードとのギャップから上から目線になってしまうケースがあります。売り手のこれまでのやり方を最大限リスペクトし、承継直後からガラッと変えるような提案をするとなるとなかなか難しいです」

続いて、買い手側に売り手の魅力が伝わるような効果的な情報発信の方法についての質問に、大沼氏は決算書に現れないような事業の強みや課題を整理して見える化することが大切だと伝えました。

大沼氏「日本政策金融公庫では『つなぐノート』『ゆずるノート』というワークブックを準備しております。これらを活用して強みや弱み、改善策を明確にすることで、事業の魅力を自信を持って伝えられるようになります」

江尻氏は、事業者様の本心、地域への思いを誠実に伝えることの重要性を強調しました。

江尻氏「何を譲りたくないのか、何を残したいのか。どういう方に来てほしいのか、地域に対してどういうアクションを踏んでほしいのか。その思いを、本心として語っていただくのが一番です」

事業承継を「当たり前」の選択肢に。諦めずにまずは相談を

パネルディスカッションの最後に、大沼氏は、「小規模事業者にとって第三者承継が当たり前の選択肢になってほしい」と語り、売り手と買い手が相互に尊重し合い、承継後の事業成長や地域経済への貢献を促す信頼関係を醸成していくことの重要性を強調しました。

江尻氏は、地域を変えていくためには、地域の人たちから信頼度が高い行政が旗振り役として事業承継に取り組む必要があると訴えました。また、諦めずにまずは相談をしてほしいと訴えかけました。

江尻氏「支援機関には幅広い選択肢を持つことの重要性を、事業譲渡者には事業は思っている以上の価値があることを、そして後継者候補には十分な情報収集と計画、信頼できる機関の承認を得ることを伝えたいです。諦めずに相談することが大切です」

レポート後編では、承継先を探している地元の4つの事業者による事業承継プレゼンテーションの様子をお伝えします。

事業承継に関するお問い合わせ情報
https://shoukei.nice-o.or.jp/

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2026.1.16

12月7日(月)、小商い体験講座「SOU-me」の第5回を開催いたしました。

主催:SSSW
募集期間:2026/01/14〜2026/03/31
開催期間:2026/01/14〜
2026.1.16
イベント/セミナー/研修を探している とりあえず事業の相談がしたい

県内全エリア

「好きを形に小さく一歩踏み出す基礎編」のビジネスアイデアセッションをテーマにする5回目の会場は、東御市にあるコワーキングスペース「えべや」さんにて実施いたしました。東御市は女性起業家が元気な街として知られ、商工会も「起業しやすい街」を目指して積極的に取り組まれております。えべやコーディネーター臼井さんの協力の元、東御市の田中商店街を歩いて、起業の先輩である店主のお話を直接お伺いし、その後ビジネスアイデアをみんなで生み出すという盛りだくさんの内容になりました。

⚫︎ワーク1:自分の希望を整理し、ビジネステーマを決める
まずは、これから形にしていく「ビジネステーマ」を考えるセッションです。 ポストイットを使いながら、テーマを整理する時間を取りました。全員が自身のテーマを1枚のシートにまとめ上げました。

⚫︎フィールドワーク:商店街へ!まちの「困りごと」に「好き」を掛け合わせる
知っている街も、初めての街も、「ここでビジネスをするなら?」という観点で歩くとどんな発見があるでしょうか?今回は、商店街で長年事業を営んでいらっしゃり議員も務められている「ナガコシカメラ」の長越さんをお訪ねしお話をお伺いしました。そして100年の古民家をリノベして一棟がしのお宿をオープンされたばかりの「富美屋」のオーナー宮島さんに創業ストーリーをお伺いしました。

⚫︎ワーク2:ミニ「ビジネスアイデア・セッション」の体験
刺激いっぱいで会場に戻った後は、お待ちかねのビジネスアイデアセッションの時間です。
最初に3つのルール(質より量、発言に責任をもたなくてOK、YES, and で答える)を確認してから、グループでスタートしました。

どのチームも、自分のワクワク・やりたいから始まるビジネスアイデアを、仲間の力を借りて更にアイデアを出していきます!どのチームも盛り上がり、あっという間の時間になりました。

⚫︎参加者からの声を一部紹介します
街あるきをして、東御市での起業の先輩方の話を聞き、みなさんからのアイデア出しをしていただき、とても濃い時間でした。

1人で孤独に考えていたことを話す場、聴いてもらえる場がとても刺激になりました。人とつながることの大切さを実感した時間でした。

人とのつながりを再確認しました!やりたいことを形にしようとしている方と話すと元気をもらえるなーと思いました!何かやりたい!1歩ふみだしたいです!

他にも起業したい女性がたくさんいることを知れて、一歩踏み出す元気をもらえました。

街歩き+アイデアセッション、リアルで感じてアイデアを出すことの大切さと楽しさ、発見がありました!

⚫︎次回予告:最終回!「体験型イベントを企画しよう」

次はいよいよ全6回のプログラムの集大成となる最終回は、1/18(日)青木村「道の駅 あおき」内にて実施します!

今回のビジネスアイデア・セッションで生まれた種を元に、具体的にどんな「体験会」を開催するのか。皆さんと一緒にアイデアを形にしていく時間が今からとても楽しみです!

\ 増席にて単発参加も受付中! / 第6回からの単発参加も受付中です。今回のセッションを元に、どんな体験会のアイデアが出るか、皆さんと過ごす時間を楽しみにしております。新しい一歩を一緒に踏み出してみませんか?